[II-P05-4-03] 当科における冠動脈に対する外科介入
Keywords:冠動脈, 外科治療, 先天性心疾患
【背景】小児患者の冠動脈に対する外科介入は非常に稀であるが、病態や臨床像が多彩であり介入の方法に関して一定の見解はない。今回、当科で経験した小児患者の冠動脈に対する外科介入について報告する。【対象と方法】2008年以降、16歳未満で9症例(日齢0-14歳、体重2.6-43.3kg)の冠動脈に対して外科介入を行なった。内訳は冠動脈瘻(CAVF)2例(いずれも新生児)、左冠動脈主幹部閉塞(LMCAOA)4例、左冠動脈肺動脈起始症(ALCAPA)1例、先天性心疾患関連として大動脈弁上狭窄(SVAS)に合併した両側冠動脈入口部狭窄1例と総動脈幹症(TAC)に合併した冠動脈肺動脈起始症1例であった。CAVFでは心房中隔欠損閉鎖術を、LMCAOAでは僧帽弁形成と僧帽弁置換を1例ずつ、先天性心疾患関連の2例は根治手術を併施した。【結果】CAVF2例は瘻孔閉鎖にて盗血による虚血は改善したが、1例は瘤化していた右冠動脈内の血栓と末梢灌流域の閉塞を、1例は遺残索状構造物による僧帽弁狭窄症様の血行動態を遠隔期に認めた。LMCAOAとSVASの冠動脈再建はパッチ形成(肺動脈パッチ4例、自己心膜パッチ1例)を、ALCAPAでは冠動脈ボタンの移植が困難で側側吻合で大動脈へ直接吻合を行なった。TAC症例は右冠動脈と左前下行枝が肺動脈から起始し、肺動脈離断のみでは内腔の血栓形成が危惧されたため、肺動脈断端を上行大動脈に吻合し冠血行再建を行なった。全例生存しており、血行再建を行なった7例は全て開存が確認されている。【考察・結語】小児患者の冠動脈に対して血行再建が必要な場合は、生理的な血流が供給可能な解剖学的血行再建が望ましい。肺動脈は冠動脈再建のパッチとして有用なオプションとなりうる。また、血行再建の際には血栓予防のために口径差が極力小さくなるような再建方法を考慮すべきである。CAVFの瘻孔閉鎖後は遺残血管組織(瘤化した冠動脈や遺残索状構造物)の影響に関してフォローが必要である。