[II-P05-4-04] 孤立性片側肺動脈欠損に対するePTFE人工血管を用いた肺動脈再建術の経験
キーワード:孤立性片側肺動脈欠損, 肺動脈再建, 人工血管
【背景】孤立性片側肺動脈欠損は稀な疾患であり、肺動脈再建方法については議論となっている。今回我々は3例の孤立性右肺動脈欠損の患児にePTFE人工血管を用いた肺動脈再建を行い、最長で10年の経過を追跡したので報告する。【症例1】1歳1か月時に繰り返す肺炎を契機に造影CTで右肺動脈欠損が指摘された男児。右肺血流は右動脈管から続く低形成の右肺動脈及びMAPCAからの二重供給であった。1歳4か月時に右BTシャント増設術、1歳11ヶ月時にMAPCAに対してコイル塞栓術を施行したのち、2歳1か月時に10mmリング付ePTFE人工血管を用いた右肺動脈再建術を施行した。人工血管末梢側吻合部の狭窄に対して2回の肺動脈バルーン拡張術を要したが、術後10年で外科的再介入は要していない。【症例2】出生直後よりSpO₂低下を認め、心エコーにて孤立性右肺動脈欠損と診断された男児。右肺血流は狭小化した右動脈管に依存しLipo-PGE1製剤にて治療開始されたが、生理的肺高血圧の改善に伴い高肺血流が進行したため、日齢11に両側動脈管離断術及び6mm ePTFE人工血管を用いた右肺動脈再建術を施行した。術後は有意な合併症なく経過し、2歳8か月で再介入は要していない。【症例3】出生直後よりSpO₂低下を認め、心エコーにて孤立性右肺動脈欠損と診断された女児。右動脈管は狭小化しており日齢11にステントを留置した。生後2ヶ月頃から体重増加不良と著明な左肺高血圧(Pp/Ps=1.24)を認めたため、経カテーテル的心房中隔裂開術を施行したのち、生後3ヶ月時に8mmリング付ePTFE人工血管を用いた右肺動脈再建術を施行した。Pp/Ps=0.33まで改善し、生後5か月まで合併症なく経過している。【結語】将来的な再手術は不可避だが、生後早期から人工血管肺動脈再建術を行い良好な短・中期成績を得た。