[II-P05-5-01] 家族性先天性心疾患の特徴
キーワード:先天性心疾患, 家族性, 多因子遺伝
【背景】先天性心疾患(CHD)は出生の0.9%に発生するが、約85%は多因子遺伝であり、家族内発生は少ない。【目的】家族性と思われるCHDの特徴、病態を検討する目的で本研究を行った。【方法】2016年から2022年までに当院へ入院したCHD発端者1000人を対象とし、家族内発生を認めたCHDの性別、続柄、疾患の種類、同名疾患割合を後方視的に検討した。なお遺伝性不整脈、家族性心筋症、21トリソミー、18トリソミー、22q11.2欠失症候群、Williams症候群など既知の染色体異常に伴うCHDは除外した。【結果】22例(2%)に家族内発生を認めた。発端者は心室中隔欠損症(VSD) 9例、心房中隔欠損症(ASD) 8例で、家族発症者ではASDが9例、VSDが8例であり、VSD-VSDが5例、ASD-ASDが3例であった。兄弟発症が10例、親の発症が7例、祖父母の発症が7例であり、全体の約72%が発端者と家族発症者が同性であった。血族結婚と考えられた例はなかった。【考察】家族性CHDの発症は1〜3%と言われ、我々の報告と一致している。家族性房室中隔欠損症(AVSD)ではp93、CRELD1、GATA4などが、GATA4、NKX2.5はASDの発症に関与していることが報告されている。本研究では発端者・家族発症者の疾患は心血管異常、弁膜症、心筋疾患など様々な疾患が挙げられ、必ずしも同一の疾患が家族内に発生するわけではなかった。ASD、VSDが多かった原因は、全CHDの約50%を占める事から、妥当と考えられる。同名疾患割合が全体の約50%に認められたこと、同性の罹患率が約72%認められたことは、原因が遺伝子変異のみならず、環境、など多因子が関与していると考えられる。【結論】発端者と家族発症者の関係を調べることは、遺伝相談にも重要であり、CHDの発症原因を究明するのにも有用である。