[II-P05-5-02] 複雑心構造異常の治療中に腸管壊死を合併し小腸全摘した外国人乳児例に対する治療方針決断の難しさと終末期医療までの道筋
Keywords:終末期医療, 外国人, 予後不良乳幼児
【症例】両親ベトナム人. 胎児期から単心室を指摘. 病状説明はベトナム語通訳を介した. 在胎37週で出生し, 右側相同, 共通房室弁右室流入, 両大血管右室起始, 総肺静脈還流異常と診断し, 心不全治療を開始したが, 日齢23に胆汁性嘔吐あり, CTで消化管穿孔疑い, 緊急開腹にて上行結腸穿孔あり, 結腸ストマ作成したが, 腹部緊満続き, 日齢26の再開腹で広範に小腸壊死あり, 全小腸切除施行. この時点で各科と協議し, ① 完全TPNとなるが, 基礎疾患に加えCV関連の合併症など考慮すると予後は不良, ② Fontan術適応だが, 本例はFontan到達困難と判断し, 積極的外科介入せず, TPNと内科的治療を中心に行う方針に. しかし, 両親は全治療中止を希望. この時点で親権剥奪の可能性あり, 院内倫理コンサルテーションチーム(ECT)も交えた合同協議を施行. 上記治療方針を確認し, 現状を改めて正しく両親に伝え, 両親の意向も踏まえて, 患児に対する必要な治療について再度相談する方針となり, 両親は必要治療は継続することに同意. 以後, 児は小康状態を維持し, 徐々に両親の児への愛着形成も進み, 可能な限りの積極的医療を希望される様になった. 生後8か月で訪問看護を導入して退院したが, 生後9か月でCV感染によるseptic shock発症. この際も両親から再び治療中止の要求あり. ECTと協議し, 患児の全身状態や両親の希望も考慮し緩和的医療への移行を提案する方針となり, 両親は呼吸器離脱や昇圧剤中止に伴うリスクやDNRに同意. 集中治療離脱後, 在宅看取りも考慮し, 在宅医訪問を導入して退院. 生後10か月に発熱契機に状態悪化し, 在宅医や訪問看護師による緩和的管理がなされ, ベトナム式の祭壇や音楽が流れた穏やかな雰囲気の中で永眠された. 【結語】複雑心構造異常+小腸全摘後の管理や, 重症乳幼児を持った外国人の両親の複雑な想いへの対応を多職種間で協力して行い, 在宅緩和医療まで繋げる事が出来た.