第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

大動脈・分岐形態異常

ポスター発表(II-P06-2)
大動脈・分岐形態異常

2023年7月7日(金) 10:50 〜 11:40 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:櫻井 一(名古屋大学医学部附属病院小児循環器センター)

[II-P06-2-03] 血管輪の病型に伴う臨床経過と気管狭窄の関連について

福島 直哉1,2, 前田 潤1, 三浦 大1 (1.東京都立小児総合医療センター 循環器科, 2.平塚市民病院 小児科)

キーワード:血管輪, 気管狭窄, CT画像

【背景】一昨年の本学会で, 血管輪の病型が症状出現のリスク因子となることを報告した. 病型間での気管狭窄の程度差が要因であると予想される. 【目的】血管輪の各病型と気管狭窄の程度について関連性を検討すること. 【方法】2010年3月~2022年12月に当院に受診し,CTあるいは血管造影所見をもとに血管輪と診断した症例を対象とした.血管輪の病型は, 完全型重複大動脈弓を1型, 不完全型重複大動脈弓を2型, 右大動脈弓, 左鎖骨下動脈起始異常, 左動脈管(索)を3型, 左下行大動脈(後食道大動脈)を伴う右大動脈弓を4型, 右大動脈弓(鏡像分枝), 左動脈管(索)を5型と定義した. 各病型で症状(慢性の咳嗽や喘鳴, 嚥下障害)を含めた臨床情報, CT画像上の気管狭窄率を後方視的に調査し検証した. 気管狭窄率は, 前後径, 左右径およびその積を最大部の径で除し算出した. 【結果】症例は全体で50例. 1型は11例, 2型は10例, 3型は16例, 4型は8例, 5型は5例であった. 気管狭窄率は1型および症状の出現した症例で有意に小さかった. 時間経過を考慮した症状出現回避率は1型, 4型の順に小さく, 1型 (5型に対する1型のハザード比 14.9, 95%CI 1.7-130.9. P = 0.015)および気管の前後狭窄率 (ハザード比 0.96, 95%CI 0.93-0.99, P = 0.011)が有意な症状出現のリスク因子であった. 【考察】1型では気管・食道を大動脈が全周性に取り囲む形態のため, 気管狭窄の程度が強く症状出現のリスクが上がると考える. 1型を除いた4型で他の病型よりも症状出現のリスクが高い傾向なのは, 椎体前面の気管・食道後部に4型では大動脈が位置するのに対し, 他の病型ではKommerell憩室が位置し, 限られた前後方向の空間で圧迫の要因が異なるためと考える. 【結論】血管輪の病型が臨床経過に影響し, 1型では気管狭窄の程度が一つの要因となる.