第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

大動脈・分岐形態異常

ポスター発表(II-P06-2)
大動脈・分岐形態異常

2023年7月7日(金) 10:50 〜 11:40 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:櫻井 一(名古屋大学医学部附属病院小児循環器センター)

[II-P06-2-04] 右大動脈弓、異型左鎖骨下動脈起始、Kommerell憩室の臨床像の検討

上村 和也1, 圓尾 文子2, 藤田 秀樹1 (1.加古川中央市民病院 小児循環器内科, 2.加古川中央市民病院 心臓血管外科)

キーワード:Kommerell's diverticulum, vascular ring, Fetal Diagnosis

【背景、目的】右大動脈弓(RAA)に食道の後方を走行する異型左鎖骨下動脈(ALSCA)と左動脈管索を伴うと、血管輪となる。またALSCAの起始部が拡大しKommerell憩室(KD)となることがあり、血管輪と併せて喘鳴や嚥下困難、嘔吐の原因となりうる。近年、胎児期に診断される症例が増加しており、その臨床像を検討した。【方法】2019年1月から2022年12月に当院を受診したRAA、ALSCAの症例について、その臨床像を診療録を用いて後方視的に検討した。【結果】症例は7例。当院での胎児診断症例は3例(うち1例のALSCAは生後に判明)、他院での胎児診断症例は2例であった。当院NICU入院中のスクリーニングエコーで発見された症例が2例あった。症状出現後に診断された症例はなかった。6例(86%)が離乳食開始後に嚥下時のむせ、嘔吐、喘鳴等の症状が出現し、その全例で手術を施行した。手術施行前には全例造影CTを撮影しており、ALSCA起始部径は中央値6.7(5.3-10.2)mmであり、全例で遠位の左鎖骨下動脈径の1.5倍以上であった。1例左内頚動脈欠損を認めた。手術は全例左側開胸で行われ、KD切除、動脈管索切離、左鎖骨下動脈-左総頚動脈吻合(左内頚動脈欠損例では左外頚動脈吻合)を施行した。重篤な合併症は認めなかったが、一例で創部ケロイドに対して瘢痕切除術を要した。術後入院期間は中央値3(2-4)日であった。術後症状は4例で消失し、残り2例も改善傾向である。【考察】RAA、ALSCAでは離乳食開始に併せて症状が出現する症例が多かった。離乳食開始前から診断がついていることで、注意深く症状を観察できるため、胎児診断は有用と考えられた。乳児期の手術成績は良好である一方、成人期での手術は手術困難例が多く、破裂した場合には致命的となりうるとされており、今後無症状例の手術適応についても議論が必要である。【結論】RAA、ALSCAでは離乳食開始に伴って症状が出現することが多く、その時期の注意深い観察が重要である。