[II-P06-2-07] 大動脈縮窄・離断症手術戦略の検証
キーワード:大動脈縮窄・離断症, アプローチ, 手術戦略
【背景】大動脈縮窄・離断(CoA/IAA)は,動脈管のみ合併の症例から,複雑心疾患を合併する場合もおおく,術前の病態や心機能は多様で,治療戦略にも幅をもつ.【目的】CoA/IAA手術を振り返り,これまでの治療戦略の成績と妥当性につき検証した.【対象・方法】2010年5月〜2022年12月に施行したCoA/IAA手術のうち,拡大大動脈弓吻合を施行した連続71例を対象とし,後方視的に検討した.【結果】症例は男児:女児=36:35,手術時日齢4〜9歳(平均1.0±2.1,中央値0.2歳(日齢57)),体重1.6〜25.3(平均5.6±5.4,中央値3.3)kgであった.胸骨正中切開(M群):側開胸(L群)=45:26で,体外循環使用,動脈管閉鎖以外の手技併施,手術時間は,それぞれM群:L群=45(100%):8(31%),41(91%):10(38%),390±101:271±96(分)であった(いずれもP<0.01).M群の1例が体外循環離脱に際し,L群の1例が大動脈遮断中ショックとなりECMOを要したが,いずれも離脱し,全例が耐術した.反回神経麻痺と乳糜胸を,それぞれM群:L群=20(44%):4(15%),6(13%):3(12%)に認めた(前者のみP<0.05).他にM群で左気管支狭窄に対するaortopexyと縦隔炎を各2例経験したのに対し,L群に脊髄虚血による不全対麻痺を1例認めた.術後観察期間は0.2〜12.7(平均5.8±3.7)年で,リンパ管形成不全とカテーテル検査時合併症のため,それぞれ術後0.3,1.1年に失った.再縮窄とそれに対する経皮的動脈形成術をM群:L群=4(9%):4(15%),2(4%):1(4%)に認めたが(いずれもNS),再手術は経験していない.【まとめ】CoA/IAA手術は,いずれのアプローチで行った場合も,良好な成績であった.正中切開で術後反回神経麻痺が高率な一方,側開胸では不全対麻痺と遮断中のショックを経験しており,アプローチ選択の判断要素としたい.