[II-P06-4-04] 重症呼吸不全をきたした総肺静脈還流異常症術後の一例
Keywords:総肺静脈還流異常, 左室拡張障害, 上大静脈狭窄
症例は1ヶ月男児、在胎37週5日、胎児心音低下で緊急帝王切開にて出生体重2331gで出生。出生後から呼吸障害があり前医NICU入院、日齢5に当院搬送され心臓型総肺静脈還流異常と診断され同日修復術を施行した。術中に僧帽弁逆流が出現し僧帽弁形成術を追加した。退院前の評価では吻合部肺静脈狭窄はなく、僧帽弁狭窄は軽度で肺高血圧なしであり術後45日に退院したが退院後2日後に重症肺高血圧、呼吸障害で緊急入院となった。胸部レントゲンでは両側肺鬱血認め急性のPVOを疑ったが肺静脈の狭窄はなく、左室拡張障害による肺鬱血と判断しPICU入室した。二次性の乳糜胸水、その後中心静脈カテーテル留置による上大静脈完全閉塞となり緊急バルーン拡大解除を行った。退院前の心臓カテーテル検査では肺高血圧なく両側肺動脈楔入圧9 mmHgと予想された左房圧上昇は認めなかった。外来では利尿剤と哺乳量を調整し緩徐に体重増加させながら僧帽弁狭窄や拡張障害の進行の有無と肺高血圧、上大静脈の再狭窄の進行を慎重に観察した。その後も上大静脈狭窄が進行するたびに左肺鬱血が増悪し解除すると改善した。(考察)TAPVR術後は吻合部肺静脈狭窄のみに注視しがちだが、胎児期の左室前負荷の減少による左室拡張適応障害や体静脈循環、肺内リンパ還流の異常により、軽度な僧帽弁狭窄、上大静脈狭窄でも複合的に重なるとリンパ還流に影響し肺高血圧となり重症の呼吸障害をきたすと考えられた。