[II-P06-4-08] 肺アスペルギルローマを合併したFontan術後症例に対する右上葉切除術の経験、および手術1年後の血行動態
Keywords:フォンタン, 肺葉切除, 肺アスペルギローマ
【背景】肺アスペルギローマの治療の目的は喀血の予防と管理であり、外科的切除が原則となる。Fontan循環成立には肺血管床が重要であるが、Fontan術後患者において肺葉切除術を施行された報告は稀である。【症例】1歳時にFontan手術を施行されたEbstein病、肺動脈閉鎖の男性。右上葉の広汎な肺動静脈瘻が残存し、6〜7歳時に2度コイル塞栓術を施行されたが無効で、以後酸素飽和度は90%弱で推移するも通常の学生生活を送っていた。19歳から血痰・喀血が断続的に出現しパニック発作を伴うようになった。右上葉に向かう体肺側副動脈に対し塞栓術を行うも改善せず、その後多量の喀血を認め入院した。CTにて出血巣の周囲に空洞と菌球様構造を認め、血液検査でアスペルギルス抗体陽性であり肺アスペルギローマが疑われた。気管支鏡で出血源が右上葉に限局し、心臓カテーテル検査(心カテ)にて右上肺動脈閉塞で中心静脈圧(CVP)が上昇しないことを確認したのち、右上葉切除術を施行した。術中輸血は要さず呼吸循環も安定して経過、3週間後に退院しえた。摘出肺の病理所見より肺アスペルギローマの診断となった。術後は血痰・喀血やパニック発作は消失した。肺葉切除術1年後(20歳)に心カテを施行、動脈血酸素飽和度 96(肺葉切除術前 94)%、CVP 11(同 11)mmHg、心係数 3.2 (同 3.6) L/min/m2、体血管抵抗 23.4(同 19.0) U.m2、肺血管抵抗(PVR) 1.0(同 1.6) U.m2と血行動態指標の悪化はみられなかった。呼吸機能検査で肺活量 2.3L(予測値の54%)、一秒率72%であった。現在は復学しNYHA 1°で生活している。 【考察】Fontan後の肺葉切除術に際してはPVR上昇による循環の破綻や大出血の可能性が考えられたが、関連科合同術前カンファレンスを繰り返すことで安全に手術を施行しえた。周術期に呼吸循環の大きな変動はなく、1年後においても良好なFontan循環が保たれていた。遠隔期については慎重な経過観察が必要と考えている。