[II-P07-1-02] 発熱と呼吸器症状で来院され、敗血症性肺塞栓症を合併した感染性心内膜炎と診断された1例
Keywords:感染性心内膜炎, 敗血症性肺塞栓症, 心室中隔欠損症
【背景】敗血症性肺塞栓症 (SPE) は敗血症に伴う菌塊が塞栓子となって肺塞栓をきたす疾患である。稀な疾患ではあるが感染性心内膜炎 (IE) の合併症としても報告され、胸痛や咳嗽などの非特異的な症状で発症するためしばしば診断に難渋する。今回我々は発熱・咳嗽で発症し細菌性肺炎と鑑別を要した、SPEを合併したIEの1例を経験したため報告する.【症例】10歳女児。心室中隔欠損症 (VSD) 膜様部型と診断されていたが小欠損であり経過観察とされていた。発熱と咳嗽、頭痛が出現し近医を受診。対症薬を処方されたが、その後も発熱は持続した。咳嗽は増悪、左側胸部痛も出現し発熱6日目に前医を受診した。胸部X線検査で浸潤影を指摘され、CRP 20 mg/dLと高値より細菌性肺炎疑いで当院を紹介され入院した。来院時バイタルに明らかな異常はなかったが労作時息切れ、動悸を認めた。入院時心エコーでは明らかな疣贅を認めず、重症肺炎としてビクシリン+アジスロマイシンで治療を開始した。入院2日目も発熱は持続し炎症反応は更に増悪、また入院時に採取した血液培養の陽性が報告され、ビクシリンをメロペネムへ変更した。胸部CTを撮影したところ両肺末梢優位の多発結節影を認めSPEに矛盾しない所見であった。心エコーを再検し、VSDシャントに沿った三尖弁近傍の右室壁に可動性のある索状構造物を認めた。疣贅と判断しIEに伴うSPEと診断した。入院時採取した血液培養からメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が検出され、抗菌薬をCEZへ変更し治療を継続した。頭部MRI等で左心系塞栓症は認めなかった。アトピー性皮膚炎があり、皮膚が菌の侵入門戸となった可能性が考えられた。【結語】SPEの症状は咳嗽や胸痛など非特異的であることが多く、胸部CTは診断に有用であった。また、SPEを診断した場合はIEを疑い、入念に心エコー検査を実施することが重要である。