[II-P07-1-05] 乳児期開心術後の周術期心筋梗塞の1例
キーワード:perioperative myocardial infarction, open heart surgery, infant
【背景】周術期心筋梗塞(PMI)は、周術期における重篤な合併症の一つであるが、小児開心術後のPMIの報告はほとんどない。今回我々は乳児期開心術後にPMIを合併した症例を経験したので、報告する。【症例】9ヶ月8kg男児。診断はtotal conal defect type VSD。心停止後、経右房・経肺動脈アプローチを併用して、パッチ閉鎖を施行。心停止時間138分、人工心肺時間191分。術中経食道エコーにてVSD leak(-)、AR trivial、PSR(-)、見た目の心収縮良好だった。術後呼吸循環安定していたが、術翌日CK/CK-MB/TNI=4819/279.7/44.7と上昇を認め、ECG上V1-3でST上昇、Ⅱ・Ⅲ・aVF・V5-6で異常Q波、UCG上全体的に心収縮不良で、特に左室後壁内側、乳頭筋レベル~心尖部に壁運動低下を認め、EF=15%と低下していた。同日夕にはCK/CK-MB=3480/116.9とpeak out。術後2日目心収縮は改善傾向にあり、人工呼吸器離脱、術後3日目ICU退室。術後5日目にはCK/CK-MBは正常化した。退院時UCGにてEF=40%まで改善したものの、左室後壁内側、乳頭筋レベルの壁運動低下は残存。心筋シンチにて下壁集積低下を認めた。BNP=415。外来フォロー中、UCGにてEF=54%(術後1ヶ月)→64%(術後2ヶ月)→67%(術後3ヶ月)と改善、術後3ヶ月で壁運動は完全に正常化し、術後9ヶ月時心筋シンチにて集積低下なく、術後1年でBNP正常化した。【考察】PMIの要因は冠動脈攣縮、空気塞栓、血栓、心筋保護注入不十分等の原因が考えられるが、特に小児の場合は、原因を特定することが難しい。本症例は心機能やBNPは経時的に回復して最終的に正常化するという興味深い経過を辿ったものの、PMIは重篤な合併症であり、今後も注意深いフォローが必要である。