[II-P07-2-07] 複数回バルーン拡大術を施行して腹水貯留が改善した下大静脈狭窄を伴う肝外門脈閉塞症
キーワード:門脈閉塞症, 肝移植, 経皮的バルーン拡大術
【緒言】 門脈閉塞症はうっ血性肝障害、門脈圧亢進症を生じ、治療不応例に対しては肝移植が必要となる。今回、突然発症した肝静脈閉塞、下大静脈狭窄症例に対して経皮的下大静脈バルーン拡大術が有効であった症例を経験した。【症例】症例は13歳 女性。20XX年3月の中学受験後から食思亢進、易疲労感、腹部膨満、体重増加が徐々に出現。同年7月には眼球結膜黄染、便秘、月経停止、食思低下、下腿浮腫を認めたために近医受診した。採血で貧血、凝固系異常、AST ALTや炎症反応の上昇、低アルブミン血症、髙ビリルビン血症、髙NH3血症を認めた。CT検査で著明な肝腫大と腹水貯留、胃食道静脈瘤、肝静脈3分枝の造影不良、下大静脈狭窄(右房-下大静脈圧格差16mmHg)を指摘され、フラグミン、デフィブロチドナトリウムなどによる抗凝固療法を開始するも肝静脈の血流は回復しなかった。腹水は利尿剤で改善したが消失せず、肝移植目的で当院紹介入院となった。当院のCT検査でも右心房-下大静脈移行部狭窄を認め、同遠位部の血流うっ滞が肝静脈の閉塞の原因と考えられた。右心房-下大静脈移行部狭窄に対して、Armada 10mmとULTRAVERSE 8mmを用いたダブルバルーン法で経皮的バルーン拡大術、翌週にGekira 16mm 2本を用いたダブルバルーン法で経皮的バルーン拡大術を行ったところ右房-下大静脈圧格差は改善した。腹水は徐々に軽減消失、経皮的バルーン拡大術1ヶ月後には利尿剤が中止可能であった。肝静脈閉塞に対してはワーファリンコントロールで治療継続することとした。【考察】 肝外門脈閉塞症は難治疾患であり肝移植の適応症例が存在するが、閉塞または狭窄部位によってはカテーテル治療が症状緩和に有効である。将来的な肝移植待機リストから除外することが可能かどうかについては今後の更なる治療効果の検討が必要である。