[II-P07-3-04] 治療経過中に結腸狭窄を認めた軽度大動脈弁狭窄症を伴う心室中隔欠損症例
キーワード:腸管虚血, 結腸狭窄, 先天性心疾患
【背景】先天性心疾患による腸管虚血は重要な合併症だが、今回、消化器症状を伴わず虚血性腸炎による腸管虚血を合併し診断に難渋した症例を経験したため報告する。【症例】在胎37週2日、出生体重2050gで出生した男児。日齢5に心雑音を認め、心エコーで心室中隔欠損症(膜様周囲部欠損 5mm)、大動脈二尖弁、軽度大動脈弁狭窄症の診断となった。大動脈弓は峡部で軽度の狭窄を認めたが、順行性血流は保たれていた。生後早期より左心系容量負荷が顕著で、低出生体重でもあったため日齢24に肺動脈絞扼術を施行した。右冠動脈の起始部が大動脈と肺動脈の間に存在し、肺動脈絞扼時に一時的にST変化を認めたが、bandの調整により改善した。日齢61に術前評価目的の心臓カテーテル検査を施行した翌日に発熱と炎症反応上昇を認めた。翌日には解熱したが、その後もCRPは2mg/dlで推移し、日齢80に再び発熱と炎症反応上昇を認めた。抗生剤開始後、速やかに解熱したがCRPは陰性化せず推移した。初回の発熱時、2回目の発熱時とも血液培養は陰性であり、発熱時以外の哺乳は良好で嘔吐などの消化器症状も認めなかった。遷延する炎症反応高値の原因検索として行った消化管造影検査で、腸回転異常症と結腸狭窄を認めた。日齢100にLadd手術および狭窄腸管の切除を行った。術後は速やかに解熱し、炎症反応も陰性化した。日齢143に心内修復術を施行し術後経過良好で退院した。切除腸管の病理所見では急性・慢性の虚血がまだらに混在し、虚血性腸炎による腸管狭窄の診断となった。【考察】本症例の腸管虚血の原因については、原疾患による軽度の腸管血流低下が間欠的に起こっていた可能性などを考えている。過去の先天性心疾患に合併した虚血性腸炎・腸管狭窄の報告においても消化器症状に乏しいものが散見されており、先天性心疾患を有する児で発熱・炎症反応の遷延を認めた場合、消化器症状に乏しくとも消化管精査を検討すべきと考えた。