[II-P07-4-06] 一側肺動脈近位部欠損に対する動脈管ステント留置を介した段階的治療の経験
Keywords:肺動脈近位部欠損, 肺動脈再建, 肺血流不均衡
【背景】一側肺動脈近位部欠損は稀ではあるが, 外科的肺動脈再建が必要となる疾患である. その治療戦略や肺動脈再建法は確立されておらず, 施設によりさまざまである. 我々は, 肺血流維持のための動脈管ステント留置を先行させ, 自己組織のみでの肺動脈形成を施行した症例を2例経験したので報告する.【症例】1.在胎34週1799gで出生した男児. 左肺動脈近位部欠損の診断となったが, 低出生体重児で外科的介入が困難であり, 左肺血流の確保のために日齢12に左動脈管ステント留置を行った. その後もバルーン拡張術などで肺血流を維持しつつ体重増加を図り, 1歳7ヶ月, 8.2 kgで肺動脈形成術を施行. 左右肺動脈を離断した後, 新たに肺動脈分岐部を形成し主肺動脈と再吻合することで自己肺動脈組織のみで肺動脈形成した. 2.在胎39週6日2976gで出生した女児. 右肺動脈近位部欠損の診断となったが, 右PDAの閉塞傾向があり, 緊急でPDAへのステント留置を施行. その後, 肺高血圧が出現したため日齢42, 3.4 kgで肺動脈形成術を施行. 主肺動脈をフラップにして後壁を形成し, 前壁を自己心膜で形成することで右肺動脈形成とした. 2症例とも術後肺高血圧なく経過し, 肺動脈狭窄もなく良好な経過である. 【結語】動脈管ステント留置により肺血流を維持することで, 小さい肺動脈への外科的介入を回避する段階的治療戦略が有用と考えられるが, pulmonary blood sourceが異なるため肺血流の左右不均衡, 肺高血圧の出現には注意が必要である. また, 長期のfollow-upが必要であるが, 成長が期待できる自己組織での肺動脈再建が有用であると考えられる.