[II-P08-1-03] フォンタン手術後遠隔期に睡眠時無呼吸が急激に増悪し、夜間心肺停止に至った1例
キーワード:睡眠時無呼吸, 成長ホルモン, フォンタン手術
【背景】良好なフォンタン循環を維持するために上気道狭窄を解除することは重要だが、フォンタン手術後患者の睡眠呼吸障害は年齢にかかわらず一定の割合で合併する。術前に扁桃摘出をしたにもかかわらず、遠隔期に肥満が進行、成長ホルモン補充療法開始後に睡眠時無呼吸が急速に増悪、夜間心停止に至った症例を報告する。【症例】14歳男児、ccTGA、hypoLVに対して2歳10か月時に段階的にフォンタン手術(extracardiac TCPC)に到達。アデノイド肥大、上気道閉塞に対してフォンタン手術前に両側扁桃摘出、アデノイド切除を施行された。その後明らかな上気道閉塞症状なく経過していた。13歳になって以降肥満が急激に進行(肥満度: 13歳0か月 37%、13歳6か月 63%)した。同時期に成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長(身長 -4.0SD)に対してGH補充療法を開始され、成長速度の改善が認められた。GH補充開始2か月後頃よりいびきや睡眠時無呼吸症状が出現した。鼻咽腔ファイバーでは上咽頭の浮腫と喉頭にかけてびまん性にリンパ濾胞の腫脹が認められ、ステロイド点鼻、抗アレルギー薬内服を開始された。そのほか睡眠時の体位指導や在宅酸素の増量を行い、睡眠時ポリグラフ検査を予定した。しかしGH補充開始4か月後、自宅で深夜帯に心肺停止状態で発見された。蘇生処置で心拍再開されたが、重度な神経障害が残存した。臨床経過から上気道閉塞による睡眠時無呼吸、窒息から心停止に至ったと考えられた。【考察】本症例が上気道閉塞症状の出現から急激な転帰を辿り、心停止に至った原因として、小顎、肥満、フォンタン循環であるなど複数因子の関連が考えられた。臨床経過からGH補充療法が病態への関与も示唆されたが、これまでフォンタン手術後患者で同様の報告はない。フォンタン手術後患者の睡眠時無呼吸は致死的な転帰を辿る可能性があり、早期に夜間非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)など積極的な治療を検討する必要がある。