[II-P08-1-05] 大動脈弁上狭窄症による感染性心内膜炎に続発した10歳の脾動脈瘤
キーワード:脾動脈瘤, 感染性心内膜炎, 大動脈弁上狭窄症
【背景】感染性心内膜炎後の仮性動脈瘤の合併症の頻度は成人において2-10%と言われているが、小児の報告は非常に少ない。その破裂リスクは成人において37%とも言われている。【症例】10歳男児が右足の痛みと発熱を主訴に来院した。大動脈弁上狭窄症があり、2歳でMyers手術を受けたが、再狭窄が徐々に進んでいた。母も大動脈弁上狭窄症であった。来院3か月前から繰り返す四肢の痛みを訴え、整形外科クリニックに受診していたが発熱はなく、抗生剤治療なしで経過観察されていた。来院4日前に乳歯が抜けた。来院時、右足は蜂窩織炎様に赤く腫れていたが、他の皮膚・粘膜部位に特徴的な結節は認めなかった。経胸壁心エコーで大動脈弓部に複数個の疣贅を同定し、血液培養で口腔内常在菌のAbiotrophia speciesが同定され、感染性心内膜炎と診断した。齲歯はなかった。入院時の造影CTで脾梗塞や腎梗塞を多数認めたが、脾動脈瘤は認めなかった。緊急の外科的疣贅除去術を行い、抗生剤治療(ペニシリン、ゲンタマイシン併用)を開始した。術後1か月でフォローアップの造影CTを施行したところ偶然、10㎜大の脾動脈瘤を新たに同定した。準緊急的に破裂予防のためのコイル塞栓術を施行した。7週間のペニシリン治療を終了後、2か月後に大動脈置換術を施行した。家族性大動脈弁上狭窄の原因に関してはマイクロアレイ染色体検査や全エクソーム解析を行ったが、原因は指摘できなかった。病理所見でも大動脈弁上狭窄部に結合織病を疑う所見は認めなかった。【考察】成人では①有症状②20㎜を超える③急激に増大する脾動脈瘤が治療適応と示されているが、小児における治療基準は明確ではなく、今後、多施設で過去の小児期の脾動脈症例を集めて検討したい。家族性大動脈弁上狭窄症がもつ動脈の特性が、小児に少ない感染性心内膜炎後の脾動脈瘤をきたしたと推測するが、その原因は同定できなかった。