[II-P08-2-05] TGAⅠ型に待機的BASは必要か
キーワード:完全大血管転移症, TGA, BAS
【背景】当院ではTGAⅠ型に対して手術待機目的のBASを標準戦略としていない。2013年度までは当院でも手術待機目的のBASを行なっていたが、BASによる合併症への懸念から胎児診断例では計画分娩で週末の分娩を避ける、出生前後より手術日を調整し生後1週以内に動脈スイッチ術を施行するなど、極力BASを施行せず手術につなげる方針としている。今回待機目的のBASの要否について検討を行った。【対象】2010年4月1日から2022年12月31日の期間で当院に入院したTGAⅠ型の症例を待機目的のBASを標準戦略としていた群(A)としていなかった群(B)とに分け、合併症や予後の比較検討を行った。【結果】対象は47例(A群:15例、B群:32例)でBASを行った症例はそれぞれ10例(66.7%)と8例(25.0%)だった。在胎週数や出生体重、ASD径、入院時のSpO2、術後合併症の発生率に有意差はなかったが、手術日齢(6.3日 vs 3.6日)、入院日数(34.7日 vs 21.5日)で有意差を認めた。BASの内訳はA群では生後24時間以内の緊急BASが6例、待機目的のBASが4例に対して、B群では緊急7例に対して待機目的が1例であった。BAS直前のSpO2もA群(73.3±7.8%)に対してB群(61.7±9.8%)が有意に低かった。【考察】BASの合併症として血栓症、空気塞栓や弁・血管損傷などが報告されている。従来は待機的に手術を行うことで手術の成功率が向上すると考えられていたが、手術成績の向上に伴いBASの適応は限られるようになったと考えられる。本検討でもA群とB群とで予後の有意差はなく、入院期間も縮小できており待機的に手術を行うメリットは少ないと判断している。【結語】生後数日以内に動脈スイッチ術が行われる場合、待機的BASを行う利点は少ないと考えられる。一方で救命目的のBASは依然として必要であり、緊急時に安全なBASが行えるよういかに手技を獲得していくかが今後の課題である。