[II-P08-3-02] Fontan循環の房室弁逆流重症度の関連因子
Keywords:房室弁逆流, Fontan循環, MRI
【背景】房室弁逆流はFontan(F)循環の予後リスク因子であるが、重症度に寄与する因子は血行動態により異なることが推測される。近年、広く用いられつつある心臓MRIによる定量的評価が、これらの病態解明に有用である。【目的】F循環患者における房室弁逆流の重症度に関連する因子を、フォンタン術前後に施行されたMRIを用いて明らかにすること。【対象と方法】2017~2022年に当院でF術を受けた236例のうち、房室弁逆流に対し外科的介入が行われた60例を除き、F術前後にMRIを施行された81例を対象とし、診療録を用いて後方視的に検討した。【結果】対象は81例(男45、女36)で、F術の年齢は中央値2歳9か月であった。房室弁形態は共通房室弁7例、僧房弁31例、三尖弁23例、二房室弁20例であった。主心室は左室41例、右室36例、その他4例で、右側相同9例、左側相同1例であった。MRI検査のタイミングは、F術前(中央値2歳3か月)、F術後約半年(中央値3歳5か月)だった。平均逆流率はF術前8.1±5.1%、F術後7.9±5.0%であった。F術前の逆流率に関連するのは房室弁形態(三尖弁11.1±1.1%、共通房室弁10.6±1.8%、二房室弁8.1±1.0%、僧房弁5.6±0.9% p<0.01)、主心室右室(10.2%vs.6.4% p<0.01)、Heterotaxy(12.1%vs.7.5% p<0.01)であり、Glenn術時年齢が高いほど逆流率が高かった(p<0.01)。術後の逆流率は主心室右室(9.6%vs.6.4% p=0.02)で多く、体肺側副血行量が多いほど逆流率も高かった(p=0.02)。弁形態の違いによってF術前後の逆流変化率は変わりなかった。【考察】房室弁逆流の重症度はFontan術前はGlenn手術による容量負荷軽減が影響し、術後は体肺側副血行と関連していた。段階的手術のタイミングや側副血管への対応を考慮する必要がある。