第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

フォンタン手術後遠隔期

ポスター発表(II-P08-3)
フォンタン手術後遠隔期

2023年7月7日(金) 15:50 〜 16:35 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:小柳 喬幸(慶應義塾大学 小児科)

[II-P08-3-07] 当院のFontan術後蛋白漏出性胃腸症症例の検討

坂崎 尚徳1, 石原 温子1, 豊田 直樹1, 稲熊 洸太郎1, 飯田 尚樹1, 前田 登史2, 森 乙姫2, 吉澤 康祐2 (1.兵庫県立尼崎総合医療センター小児循環器内科, 2.兵庫県立尼崎総合医療センター心臓血管外科)

キーワード:Fontan, Protein losing enteropathy, gastrointestinal bleeding

【背景】Fontan(F)術後の蛋白漏出性胃腸症(PLE)の生命予後は改善しつつあるが,消化管出血を伴う症例の報告も散見され,依然として難治性合併症であることに変わりは無い.【目的】PLEを合併したF術後症例の臨床経過を検討すること.【方法】1993年以降, 当院でPLEと診断した8症例(男性3例,12歳~42歳)について,臨床診断,手術歴,PLE発症年齢,発症後の治療と経過を臨床録から調べた.【結果】臨床診断は,DORV 3例,cTGA 2例,UVH 3例で,右側相同2例,左側相同1例. PLE診断時年齢の中央値は 9歳で,F術後PLE診断までの中央値は3年, PLE後経過観察期間の中央値は 12年(2~23年)であった. PLE発症後の外科的介入は6例(fenestration(fen.) 6,CAVVR 1,CAVVP 1, SAS relief 1),内科的治療ではheparin療法6例(5例離脱)steroid(S)療法7例(predonisolone 5, budesonide 1,離脱1), octreotide(O)療法2例(1例離脱),tolvaptan内服例2例, aldactone大量療法6例,pulmonary vasodilator 7例であった.現在6例が寛解,再発が1例で,1例はS療法抵抗性で治療に難渋している.寛解期間の中央値は6年(2ヶ月から14年)であった. 2例で消化管出血による貧血を認め,1例は房室弁置換術後でワーファリンとアスピリンを内服していたが,輸血による貧血の補正とアスピリン中止によりPLEの寛解を得た.また,もう1例はS療法とO療法により7年近く寛解していたが,タール便を機に貧血とPLEの再発を認め,O療法の再開を検討している.【考察】PLEの寛解率は既知の報告より高く,fen.作成と積極的な内科的治療の効果と考えられる.一方,消化管出血による症例では,貧血によりhigh outputとなることがPLEにも悪影響を及ぼす可能性があり,貧血の早期の補正,出血傾向に対する薬剤選択の再検討が必要と考えられた.【結論】F術後のPLEに対しては,発症後 fen.作成に加え内科的治療を駆使し,貧血に対する内科的管理も重要である.