[II-P08-4-01] 高度の肺実質病変と肺高血圧により救命が困難であったFLNA遺伝子異常乳児例
キーワード:FLNA, 肺高血圧症, 肺血管拡張薬
【背景】FLNA遺伝子は,アクチンフィラメント蛋白であるフィラミンAをコードし,その機能異常により,脳室周囲異所性灰白質,心血管異常,肺実質障害,骨格異常などの特徴的な表現型を呈する.特に肺病変は慢性肺疾患に類似し,肺高血圧(PH)や肺移植に至る重症例も報告されている.【症例】在胎31週0日,体重1170g,Apgar 5/7点で出生した女児.心エコー上径2.5mmの心室中隔欠損(VSD),三尖弁異形成,大動脈弁閉鎖不全,PH,右鎖骨下動脈起始異常を認めた.低酸素血症が遷延し,月齢1頃より慢性肺疾患様の胸部X線像を呈した.頭部MRIで脳室周囲結節性異所性灰白質を,胸部CTで肺実質の多数の線状・索状影とびまん性の気腫性変化が認められ,表現型からFLNA遺伝子変異を疑い,同遺伝子内に1.6kbの欠失が検出された.月齢5に行った心臓カテーテル検査で,肺体血流比1.08,肺動脈平均圧 32 mmHg,肺血管抵抗値7.20 単位・m2と,左右短絡によらないPHを認め,100%酸素負荷で肺動脈拡張反応なく,VSD閉鎖適応外と判断された.シルデナフィルを導入したがPHの改善なく,気道感染を契機に呼吸障害が進行し,人工呼吸器管理、一酸化窒素吸入を行ったが,肺出血を合併し月齢11に永眠した.剖検では,肺胞中隔形成不全によるびまん性の肺胞腔拡大や肺胞出血の所見を認めたが,肺動脈中膜や内膜の肥厚は認められなかった.【考察】本症例は,病理組織所見から肺疾患,低酸素血症に伴うPHと考えられた.FLNA遺伝子異常によるPHにおいて,肺実質病変を伴う場合は肺血管拡張薬の効果は乏しく,救命のためには肺移植を念頭においた管理が必要であることが示唆された.