[II-P08-4-05] 喀血を契機に診断した肺静脈閉塞性疾患による肺動脈性肺高血圧症の一例
キーワード:肺静脈閉塞性疾患, 肺動脈性肺高血圧症, 肺血管拡張薬
【背景】肺静脈閉塞性疾患(PVOD)は末梢肺静脈(PV)の内膜の肥厚や線維化が進行することで肺高血圧(PH)を惹起する。今回PVOD-PHに対して外科的介入と肺血管拡張薬の併用を行った症例を経験したので報告する。【症例】症例は4歳男児。喀血を認め当科受診。低酸素血症に加え心臓超音波検査で著明なPH所見を認めた。利尿薬に加えてambrisentanとtadalafilを開始し、喀血は再燃なく心臓超音波検査でも改善傾向にあった。4歳2ヶ月時の心臓カテーテル検査では平均肺動脈圧(mPAP)52mmHg、肺血管抵抗(Rp)8.6 wood unit/m2と著明な上昇を認めた。左肺動脈楔入圧(LPAWP)17mmHgと高値であり、左PV狭窄の存在も指摘されたが、PHに対する薬効も認めておりselexipagも併用した。4歳4ヶ月時の心臓カテーテル検査では、mPAP 44mmHgと改善あり、LPAWP 16mmHgと著変なく左下肺静脈の還流に狭窄を疑うジェットを認めた。造影CTでは左右肺静脈と左房の接合部に狭窄を認め、PVOD-PHと診断した。PH内服治療による薬効はあったものの主病態は肺静脈狭窄によるPVOD-PHと判断し、4歳7ヶ月時に肺静脈狭窄解除術を施行した。術後は在宅酸素療法を導入しtadalafilのみの内服管理とし在宅療養が可能となった。5歳6ヶ月時の心臓カテーテル検査ではLPAWP 8mmHg、mPAP 61mmHg、Rp 4.9 wood unit/m2とmPA圧の改善はないものの外科介入した左PV狭窄やRpの改善を認め、PH治療薬の効果も期待しselexipagを再開した。PVODの外科的再介入の必要性も検討しながら慎重な内科管理を行っている。【考察】PVODに対して肺血管拡張薬を投与した場合、肺動脈のみを拡張することで換気血流不均衡の助長や肺水腫を来たす可能性がある。本症例は当初肺動脈性PHを疑ったが、精査の結果から主病態はPVOD-PHと診断しPV解除を行った。PVOD-PHは外科的介入後の再狭窄のリスクがあるが、肺血管拡張薬を組み合わせることにより一定の治療効果が期待できる。