[II-P08-4-06] 心臓カテーテル検査中に肺高血圧クリーゼを発症した重症特発性肺高血圧症の幼児例
Keywords:特発性肺動脈性肺高血圧, 肺高血圧クリーゼ, 急性血管反応試験
【背景】小児の特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)におけるカテーテル検査は、重症度評価と予後予測、治療薬選択や効果判定において重要である。低年齢発症例ほど合併症リスクは高く、肺高血圧クリーゼ(PHC)を発症すると重篤な合併症が生じうる。今回、初回カテーテル検査時にPHCを生じたIPAHの3歳男児例を経験したので報告する。【症例】3歳男児、体重13kg。来院前日からの嘔吐と経口摂取不良を主訴に当院を受診。SpO2低下があり胸部単純X線検査を施行したところ心拡大を認めた。BNP 1831pg/mL、心エコーで著明な右心負荷所見(severe TR 4.0m/s、心嚢液貯留)を認め入院となる。IPAHと診断し、入院8日目に全身麻酔下でカテーテル検査を施行。大腿静脈アプローチよりwedge Bermanカテーテルによる肺動脈楔入圧測定時にPHCを発症し、血圧 30/15mmHg、SpO2 94%、HR 55bpmに低下した。低血圧は約2分間持続し、その間のBIS値は0であった。エピネフリン投与およびNO吸入により血圧は回復したが、NO吸入離脱は困難であり、検査を断念し挿管下でICUへ帰室した。同日よりPDE5阻害薬、エンドセリン拮抗薬の内服を開始し、術後3日目に抜管した。経過より急性血管反応試験(AVT)陽性例と判断し、術後8日目よりCa拮抗薬を開始した。退院時BNP 230pg/mL、severe TR 1.9m/s、心嚢液貯留なし、神経学的後遺症はなく入院26日目に退院した。【考察】PHCに備え全身麻酔下でカテーテル検査を施行し、発作時の対応は速やかに行えたが、カテーテル操作については改善の余地があった。欧米のガイドラインではAVT陽性の場合、Ca拮抗薬が第一選択となるが、AVTが正確に行えなかったことから、PDE5阻害薬およびエンドセリン拮抗薬を導入後に、Ca拮抗薬を追加導入した。紅潮以外の合併症は認めていない。【結語】重症IPAHにおいて、PHCのリスクが高い症例では、治療を優先することも検討すべきであると思われた1例であった。