[II-P08-4-07] 一酸化窒素およびEpoprostenolの効果が乏しく診断に苦慮した特発性肺動脈性肺高血圧の1例
キーワード:特発性肺動脈性肺高血圧, Epoprostenol, 肺静脈閉塞性疾患
【背景】一酸化窒素(NO)およびEpoprostenol(Ep)はcriticalな肺動脈性肺高血圧症例に対する急性期治療としてよく使用されるが, 今回それらの効果が乏しく診断に苦慮した特発性肺動脈性肺高血圧(IPAH)症例を経験したのでその原因の考察を踏まえ報告する. 【症例】精神発達遅滞を指摘されている4歳女児. 近医で心雑音を指摘され, 睡眠導入剤内服下の心エコー図検査で重症三尖弁閉鎖不全,右心系拡大を指摘され当院へ救急搬送された.来院時呼吸循環は保たれていたが傾眠状態であり,PICUにて挿管人工呼吸管理下にNO吸入,Epの持続投与を開始した.治療開始後も心エコー図検査での推定肺動脈圧は低下せず,造影CTを施行したところ両肺野にすりガラス影や無気肺が散見されたことから肺静脈閉塞性疾患(PVOD)や多発性末梢型肺動脈狭窄症などを疑いNO,Epを漸減中止した.中止後も循環動態は破綻することなく入院7日目に抜管に至った.最終的に肺血流シンチグラフィや心臓カテーテル検査時の選択的肺動脈造影の所見からIPAHと診断した.NO負荷,酸素負荷への反応を認めたことからMacitentan,Tadalafil併用療法を開始し,その後肺高血圧は徐々に改善しており現在も同治療を継続中である.【考察】本例はPH crisisを危惧してICU管理下にNO, Epでの治療を開始したが,肺動脈圧の低下を認めなかったため,診断に時間を要し治療の中断を余儀なくされた.治療反応に乏しかった理由としては鎮痛鎮静が不十分で肺血管攣縮が惹起された可能性や,Epを短時間で増量したため効果判定が不十分であった可能性が考えられた.現在のところ経口肺血管拡張剤の反応は良好であるが,PVODの鑑別を含め注意深い経過観察を要すると考えられる.【結論】治療反応の乏しい重症肺高血圧症例では疾患の鑑別と肺高血圧を増悪させる因子の検索・除去を行う必要がある.