[II-P08-5-01] 小児心エコー図検査での正常回帰式の違いによる弁輪径計測の比較
キーワード:心エコー検査, 正常値, 正常回帰式
【背景】小児の心血管評価では体格に対する正常値との比較が必要であるが、正常回帰式の選択は各施設に委ねられている。【対象・方法】心合併症のない川崎病遠隔期の225例(男149例)について、心エコー検査の傍胸骨長軸断面から僧帽弁輪径(MV-PL)と大動脈弁輪径(AV)、心尖部四腔断面から僧帽弁輪径(MV-4C)と三尖弁輪径(TV-4C)を同一検者がオフラインで計測した。体表面積(BSA)から求めた対正常%値(%)とZスコア(SD)を2つの方法(D法:Daubeney式(BSA:Du Bois式)、P法:Pediatric Heart Network式(BSA:Haycock式))で算出し比較検討した。【結果】年齢(歳)中央値6.6(1.3-13.6)、BSA(m2)はDu Bois式0.83(0.42-1.67)、Haycock式0.83(0.44-1.67)で有意差はなかった。それぞれの対正常%値とZスコアはMV-PL (D法91.0±7.5、P法100.9±8.3、p<0.001)、(D法-1.04±0.88、P法0.09±0.63、p<0.001)、MV-4C(D法95.9±7.7、P法113.3±9.4、p<0.001)、(D法-0.64±0.84、P法1.35±0.95、p<0.001)、TV-4C(D法91.3±8.9、P法114.1±10.9、p<0.001)、 (D法-1.18±1.21、P法1.14±0.89、p<0.001)、AV (D法100.4±7.4、P法112.7±7.5、p<0.001)、(D法0.02±1.11、P法1.34±0.79、p<0.001)であった。Brand-Altman解析での差異が最も大きかったのはTV-4Cで、差の平均とLimit Of Agreementは対正常%値が-22.7%(-27.0~-18.4)、Zスコアが-2.3(-3.0~-1.6)であった。【考察】正常回帰式による差異は大きく、対象の年齢・体格分布や症例数、人種差などが影響している可能性がある。今後は十分な規模の日本人小児例をもとにした正常回帰式の策定が望まれる。