[II-P08-5-05] フォンタン循環の血行動態において腹部圧迫で何が評価できるか
キーワード:負荷試験, フォンタン, 静脈機能
背景:心室圧容積関係構築時には、腹部圧迫により容量負荷時の心室拡張特性評価が可能である。しかし腹部圧迫はValsalva手技の代替として心室容積減少に利用されることがあり、また胸腔内圧上昇により、心血管特性が修飾される側面もある。腹部圧迫によりフォンタン循環の心室・血管特性評価が可能かを検証した。対象と方法:心臓カテーテル検査の際に腹部圧迫中の中心静脈圧(CVP)、心室内圧を同時に測定したフォンタン術後28例を対象とし、心血管特性を反映するかを解析した。結果:腹部圧迫中の心室拡張末期圧(EDP)上昇は7.1±2.4mmHgであった。EDP上昇と圧迫前EDP値、心室容積は関連しなかった。また容量負荷による心室容積拡大は、低EDPほど大きくなり、その結果収縮期圧上昇が顕著になることが想定されるが、実際には圧迫前EDPとEDP変化に対する収縮期圧上昇 (ΔSP/ΔEDP)は関連しなかった。またEDP上昇と収縮期圧上昇は線形性(ΔSP = 3.0 + 0.9×ΔEDP, p=0.0053)を示し、拡張期末圧容積関係よりも胸腔内圧の影響が強いと考えられた。一方、腹部圧迫前CVPは肺血管抵抗と正相関した (p=0.014)が、圧迫後CVPは肺血管抵抗とは関連せず、安静時CVP高値ほどより強くCVPが上昇した。CVP変化は実測循環血漿量、レニン活性、血漿アルドステロン、IV型コラーゲン/7Sと正相関し、静脈系の機能的・器質的変化を示すと考えられた。一方、造影剤による容量負荷前後のCVPは負荷前後とも肺血管抵抗と正相関し、CVP上昇は循環血漿量と関連する傾向があったが、RAAS系・コラーゲン代謝指標とは独立していた。結論:フォンタン循環において腹部圧迫は容量負荷にはなるが、心室拡張機能評価の際には心室特性以外の影響が強い。一方、中心静脈圧上昇は既報の下大静脈閉塞負荷時と同様の挙動を示し、フォンタン循環における静脈系特性を反映する。腹部圧迫はフォンタン循環の循環平衡評価に極めて有効な可能性がある。