[II-PPD3-04] トリソミー18/13の循環器診療:文献レビューからみた予後と,方針決定の留意点
Keywords:トリソミー18/13, 循環器診療, 治療方針
トリソミー18/13は先天性心疾患を高率に合併し,小児循環器領域の医療者が診療する機会は多い.以前は生命予後不良として積極的な治療が行われなかった.本邦では2004年に「重篤な疾患を持つ新生児の医療をめぐる話し合いのガイドライン」(田村正徳)が出され,患者家族を含めた医療チームで治療方針が検討されるようになった.2006年にKoshoらが新生児集中治療を受けたトリソミー18/13児の予後が改善することを初めて報告し(Am J Med Genet A 2006),その後本邦の複数の施設から,心臓血管手術を含めた積極的治療介入が生命予後を改善させるとの報告が相次いだ.近年,積極的な治療により生命予後が改善するとの報告は海外からもなされ,5年,10年の長期生存率を報告するpopulation-based studyもみられる.一方で母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)の普及に伴い,人工妊娠中絶される症例も増加し,疫学的な影響が指摘されている.心疾患では,肺血管閉塞性病変が早期に進行する症例があるなどの特徴が徐々に解明されつつある.心臓血管手術に関しては,体格や心形態の特徴,手術時期や方法,他臓器合併症など検討すべき課題は多い.手術により長期的な生命予後を改善しうるかどうかは未だ不明で,施設間で対応の相違がみられる.気道・消化管・中枢神経など多臓器に及ぶ多彩な合併症を有するため,多科・多職種の連携は欠かせない.治療方針の決定においては,生存期間の延長のみならず,在宅医療も見据えた患児と家族のQOL向上の観点が重要である.蓄積されてきたエビデンスに基づき家族に情報を提供し,十分な話し合いを通じて「児の最善の利益」と家族の意思を尊重しつつ,症例ごとに最もよい治療を模索する必要がある.治療の目標をどのように設定すべきか,ディスカッションを通じて考えたい.議論の基となる最近の状況と課題について,文献レビューを通じて提示する.