[II-PSY3-01] 【Keynote Lecture】小児医療におけるEnd of Life Care
Keywords:小児, 緩和ケア, End of Life Care
小児科領域のEnd of Life Careにおいては、病態の多様さや子どもの発達段階に応じたきめ細やかな対応が必要なこと、成人に比べて死亡数が圧倒的に少ないことで小児科医や関わるスタッフの看取りについての経験値が上がりにくく、小児科医の緩和ケアへの意識を育てること、緩和ケアの専門家を養成することが困難であることなどが特徴としてあげられる。また、予後予測の困難さ、高度医療の提供と生存追及の倫理性のジレンマ、保護者の望む治療の手控えと医療ネグレクトの線引きなど、小児の終末期ならではの困難な課題もある。そういった課題をはらみながらも、各々のシチュエーションで子ども本人と家族を尊重し、残された時間を医療中心の時間から家族中心の時間にしていくことが、End of Life Careの本質であろうと思う。子ども本人は何を望んでいるか、子どもにとっての最善の利益とは何かを家族と共に考え抜く営みと言い換えてもいいだろう。子どもを喪った後の家族の人生を支えるのは、子どもと共に過ごした時間の記憶である。救命不能であることが医療の終焉なのではなく、残された時間を家族のこの先の人生に温かな思い出として位置付けることもまた、我々医療者に出来る大切な仕事なのである。そのためには、困難な状況で人が陥りやすい心理的な状況(心理的防衛機制)についての知識を得ることや、我々自身の中に生じる様々な感情について理解することが役に立つ。また平時から、厳しい場面を乗り切るための強く、しなやかなチーム作りを心がけることも必要である。前職の小児専門病院で行ってきたコンサルテーションリエゾンや緩和ケアチームの取り組み、小児科医やスタッフと行った勉強会のことなどを交えながら、小児医療におけるEnd of Life Careについて考えてみたい。