[II-PSY3-03] 当院での先天性心疾患患者の終末期対応 ~DNAR指示取得の現状と課題~
Keywords:DNAR, 心肺蘇生, 終末期
背景: 先天性心疾患患者では、積極的な治療での予後改善が期待できる反面、急激な病状悪化も起きうるため、医療者と患者・患者家族とで終末期の認識共有が難しい。Do not attempt resuscitation (DNAR)とは心肺蘇生処置見合わせを意味するが、DNAR=治療差し控えという認識が臨床現場ではまだ垣間見える。目的: DNAR指示取得と心肺蘇生処置実施の状況から、患者家族と医療者間で病状認識共有がなされ、患者の尊厳が守られているかを調べる。方法: 2013年1月~2022年12月での当院の死亡症例を対象とした。患者家族との信頼関係構築が難しい生後1か月未満の症例は除外。死因、死亡場所、DNAR指示取得と心肺蘇生処置に条件を付けたpartial DNAR指示取得の有無、心停止時の心肺蘇生処置実施に関して検討。結果: 対象は48例で男性24例(50%)、月齢中央値5か月(1~67)。死因は原疾患による心不全増悪18例、敗血症等の非心血管事象18例で最多で、予後予測困難な不整脈・血管事象・突然死は各2例。死亡場所はICU/NICU34例(71%)が最多で、自宅での看取りが6例(13%)。DNAR指示は19例(40%)で取得され、全例で心肺蘇生処置は未実施。Partial DNAR指示は6例(13%)で取得され、うち4例とDNAR指示未取得患者21例の計25例(52%)で心肺蘇生処置が行われた。DNAR指示未取得患者のうち、予後不良・救命困難と言及された9例中7例(78%)では心肺蘇生に関する言及はなく、心肺蘇生処置が実施された。【結論】終末期患者に対しDNAR指示は4割の患者で取得されていたが、心肺蘇生処置も多くの患者で行われていた。先天性心疾患患者の予後予測は難しい場合もあるが、患者の尊厳も重んじ、予後不良で救命困難な患者の心肺蘇生処置は控えるべきと考える。