第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム5(II-SY05)
小児用医療機器開発の現状:アカデミアができること、すべきこと

2023年7月7日(金) 08:50 〜 10:20 第3会場 (G304)

座長:金 成海(静岡県立こども病院循環器科), 座長:小野 博(国立成育医療研究センター循環器科)

[II-SY05-01] 小児循環器領域をとりまく医療機器の諸問題

加藤 温子 (国立循環器病研究センター 小児循環器内科)

キーワード:デバイスラグ, 規制科学, アカデミア

小児領域を専門とする人間であれば誰もが「海外で行われているこの治療法・デバイスを自分たちも使いたい」と憧れたり、あるいは「なぜ日本ではこの治療ができないのか」と愕然としたりした経験が少なからずあると思います。私もかつて海外で研修をした後に「日本ではデバイスラグ(医療機器導入の遅れ)が深刻だ」とか「こんなデバイスがあれば患者さんが低侵襲的に元気になれる」と声高々に訴えることで数年後には欧米と同じ治療が行えると思っていましたが、それは全くの間違いでした。 2019年にAMED坂本班により、小児医療機器に関する医療機関へのアンケートを行った際、小児循環器内科評議員の回答者のうち、デバイスラグは問題であると答えたのは88%でしたが、HBD for childrenを知っているのは37%、治験に関わったことがあるのは24%、治験に関わりたいと思っているのは48%と、「実際困っているがどうしたらいいか分からないし、大変そうだ」という声が聞こえてきそうな結果が出てきました。しかし、ただでさえ患者の人数が少なく、多彩な病態で、病変も一様ではない小児循環器の分野においては、日本全体で(ひいては世界全体で)協力し、解決策を見つけていく必要があります。一方で最近は学会による積極的な働きかけにより、AMPLATZERピッコロオクルーダー、Harmony弁、Z-5 BASカテーテルなど近年デバイスラグも短く、承認に至っているデバイスもあります。小児用医療機器開発に係る問題の研究に関わらせていただいた当初、普段の臨床では全く使わない略語(PMDA? NCD?アカデミア?リアルワールドデータ?規制科学?)の応酬に、白目を剥いていた演者が、デバイスラグ解決への道のりと障壁、我々アカデミアがやるべきことについてできるだけわかりやすく解説させていただきます。