[II-SY06-03] 先天性心疾患術後の補助循環治療
【背景と目的】先天性心疾患術後に伴う末期重症心不全に対する補助循環治療は、解剖学的複雑さと心不全形態の多様性から補助循環導入のタイミングから手技まで様々な工夫を要する。また補助循環導入のために施設間での患者搬送を要する場合もある。当院の治療経験について報告する。【対象】2016年4月から2023年4月までにVAD装着を行った先天性心疾患11例。VAD装着年齢中央値 33.5 [四分位範囲、30.5, 38.5]歳、BSA 1.47 [1.36, 1.50]㎡(表)。手術治療の既往10例(根治術 9、姑息術1)、カテーテル治療3例。体心室は右室型4、左室型7。補助形態はLVAD 8、BiVAD 2、および遠心ポンプLVAD1例。【結果】先天性心疾患術後中央値26.5 [21.3, 32.0]年でVAD装着、VAD装着期間中央値1.3 [0.5, 3.0]年で心移植到達、離脱例無し。死亡4例(表)。1年での累積生存率 70 %。死因は1) HMⅡ装着後頻回のドライブライン感染、2) HVAD装着後中毒性表皮壊死症、3) 正中心、修正大血管転位症、ダブルスイッチ術後HVAD装着後脱血不良、4) 遠心ポンプLVAD装着後チアノーゼ、肺出血。現在移植待機6例。脳血管合併症1例。経過中の処置はHMⅡ装着3例でドライブライン感染に対するトランスロケーション。EXCORの1例で縦隔炎に対する開胸洗浄。【まとめ】1. 先天性心疾患患者に対するVAD装着後脳血管障害は認めなかったが、長期補助に伴うドライブライン感染は頻回。2. 脱血不良の1例は予後不良。原因として正中心に伴うdevice位置調整の困難及び左室内腔のスペースが十分確保できなかった可能性。3.補助循環導入のタイミングに関して判断が困難である場合が多い。