[II-SY07-01] Angiotensin receptor neprilysin inhibitor (ARNI) の小児治験より
Keywords:Angiotensin receptor neprilysin inhibitor, Enalapril, Pediatric heart failure
Sacubitrilは血管作動性ペプチドのタンパク分解酵素であるNeprilysinの阻害薬であり、その作用を抑えることでナトリウム利尿ペプチド等の作用を増強する。ValsartanはAngiotensin II受容体拮抗薬に属し、Renin・Angiotensin・Aldosterone系(RAAS)の亢進を抑える。Angiotensin receptor neprilysin inhibitor (ARNI, エンレストⓇ)は、SacubitrilとValsartanの化合物であり、成人のEnalaprilを対象とした心不全症例に対する治験(PARADIGM-HF trial)で、心不全の悪化等の項目でEnalaprilに対して優位性が証明された。その結果、2015 年7 月に米国で収縮不全を伴う心不全患者の治療を適応として承認されて以降、世界115ヵ国以上で承認されている。国内では慢性心不全を効能及び効果として2020 年6月に承認され、2021年9月に高血圧症でも承認された。そして2016年11月から小児適応を得るために、PANORAMA-HF trialが31か国で、多施設共同,ランダム化,二重盲検,並行群間,実薬対照比較試験として治験が実施された。パート 1 では治験薬の安全性などの評価、パート 2 ではその効果等をエナラプリルと比較評価する目的で実施され、国内ではパート2から参加した。対象は生後 1 ヵ月~18 歳未満、二心室循環を有する、左室収縮機能障害による慢性心不全の患者で、主要評価項目は,心不全の悪化等であった。目標症例数は世界360例、国内7例と設定され、組み入れは2019年より開始され、2022年に終了した。結果は抄録執筆時点で非公表であるが、2023年3月に欧州医薬品庁が左室収縮機能紹介による症候性慢性心不全の1 歳以上の小児に対する適応を推奨すると発表した。