[II-SY07-05] 小児先天性心疾患に対するHCNチャネル阻害薬の効果と可能性
Keywords:イバブラジン, β遮断薬, 心不全
【背景】小児心不全では古典的な心不全治療薬でさえevidenceが乏しく、成人を参考に経験的に使用しているのが現状である。β遮断薬は成人領域で強いevidenceをもち、交感神経遮断、過剰な頻脈の抑制により効果を示すが、陰性変力作用が問題となる。イバブラジンは洞結節HCNチャネルを選択的に抑制することで心臓の収縮性に影響を与えず心拍数のみを抑えることができる。成人領域でのイバブラジン使用の報告は集積しつつあるが、小児での報告はまだ少ない。【対象および方法】対象は2020年12月から2022年12月までに当科でイバブラジンを投与された小児心不全患者17例。診療録を用いて後方視的に患者背景、原疾患、内服量、心不全症状、BNP、体心室の駆出率 (EF)の推移、転帰、有害事象について検討した。【結果】男児5例、女児12例、内服開始月齢は6.7 (0.4-117)ヶ月であった。拡張型心筋症が8例、先天性心疾患 (CHD)が9例 (左心低形成症候群 (HLHS)およびHLHS variantが5例、その他が4例)であった。両側肺動脈絞扼術後が2例、Norwood術後が3例、ペースメーカー植え込み後の心筋障害が3例あった。イバブラジン維持量は0.19 (±0.08)mg/kg/日、β遮断薬併用は17例中12例であった。17例中14例で内服を継続、3例で中止していた。内服前後の平均心拍数はそれぞれ138.6 (±27.6)/min, 121.6 (±18.8)/minであり、内服により有意に低下 (p<0.01)していた。導入前と導入後12ヶ月の比較で、Ross分類は平均で3.2から2.2へ改善 (p<0.01)、BNP値は588.4 (103.6-1899) pg/mlから129.7 (7.2-2132)pg/mlへ低下 (p<0.05)、体心室EFは31.9 (±13.1)%から40.6 (±15.4)%へ改善 (p<0.01)していた。重大な有害事象を認めなかった。【考察】rate controlが必要な小児心不全症例について、イバブラジンは心筋症だけでなくCHD症例に対しても一定の効果があると思われた。心機能低下例でも安全に導入できると考えられた。