[II-SY08-01] 緊急Advance Care Planning~救急・集中治療における意思決定支援~
Keywords:意思決定支援, 集中治療室, コミュニケーションスキル
救急・集中治療の現場では、患者は基本的に重症で生命の危機に瀕していることが多く、集中治療室入室中だけではなく、生存退室したとしても、週単位、月単位、年単位で影響を与え続けることもある。さらに、予後の不確実性から、患者・患者家族と医療従事者間での治療方針にまつわる意思決定は非常に複雑なものとなるため、救急・集中治療医療従事者にとって、患者・家族との意思決定支援のためのAdvance Care Planning (ACP)は重要な診療の一部である。 米国集中治療医学会は2008年と2017年に発行した集中治療室の入室中の患者家族との患者中心のケアに関するガイドラインの中で、集中治療医療従事者が意思決定支援のためのコミュニケーションスキルトレーニングをうけることは、患者・家族との会話の質の改善や集中治療室在日日数の減少などの効果が見られるため、推奨されている。 米国では、医療従事者向けのACPのためのコミュニケーションスキルトレーニングの一つである”Vital Talk”は「何が一番大事なのかを巧みに話し合える医師によるケアが、全ての重病患者に届くような世界を作ること」をビジョンに掲げたプログラムである。筆者らは2019年以来、”Vital Talk”を日本の医療文化に適応させたトレーニングコース「かんわとーく(旧・バイタルトーク日本版)」を開発してきた。日本人受講者を対象とした調査では、トレーニングに使用されるシナリオや教育方法は日本人にも適していると評価され、受講生の満足度、意思決定支援を行うための自信は受講後に有意に改善した。 今後、日本の救急・集中治療医療従事者にコミュニケーションスキルトレーニングを普及することで、現場での意思決定支援のACPの質の向上が期待できると考えられる。