[II-SY08-03] 先天性心疾患・心不全患者における advance care planning~周産期(胎児心疾患)から成人まで~
キーワード:緩和ケア, advance care planning, 先天性心疾患
【背景】Advance care planning(ACP)は、患者本人やご家族と医療者で、将来の目標や価値観を共有しあう話し合いのプロセスを指す。小児領域においては、予後が不明であることもACPを実施する障壁の一つとされている。【目的・方法】当院小児循環器科かかりつけの患者(先天性心疾患・心不全患者など)のACP実施の現状を把握し、課題を検討した。対象は2010年1月から2022年12月までに死亡した患者とし、年齢別に分類した(G1:新生児-乳児期0-1歳、G2:幼児期2-5歳、G3学童期6-10歳、G4:青年期11-17歳、G5:成人期18歳~)。死亡原因、胎児診断の有無、死亡前のACP・蘇生措置拒否(DNAR)確認の有無、最終入院日数を集計した。【結果】対象は83症例、G1:n=51(61%)、G2:n=11(13%)、G3:n=10(12%)、G4:n=4(5%)、G5:n=7(8%)であった。死亡理由は心不全がG1,G2,G5が63~73%に比べ、G3,G4は25%,40%と低率であった。不整脈を含む突然死はG1,G2,G5は16~30%に比べ、G3,G4は40%,75%と高率であった。胎児診断はG1,G2,G3が77-90%であったが、G4,G5は0-25%と低率であった。ACP・DNARの確認は全体で65%に実施されており、年代別ではG1が73%と最も高率であった。不整脈・突然死の多かったG3,G4は25-40%と低率であった。最終入院が30日以内の場合、ACP・DNAR実施率が39%(n=13/33)、30日以上の入院の場合は84%(n=42/50)と高率であった。【考察】新生児・乳児期のACP実施は高率であった。胎児診断率の向上や、胎児期からの心理士介入を含めた、ご両親との関係性向上がACP実施に寄与している可能性がある。学童期・青年期は不整脈を含む突然死もあり、入院日数も少ないためACP実施率は低かった。突然死の予測は困難であるが、今後の課題として、現在はACP実施が必要と思われる患者のリストアップを行っている。青年期・成人期の患者に対しては事前指示書を利用し、最終入院前から本人への病状説明や意思確認の実施率向上を試みている。