第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

JSPCCS-JCC Joint Session

JSPCCS-JCC Joint Session(II-TSPCJS2)
先天性心疾患に対する、抗凝固・抗血小板療法に対する治療戦略

2023年7月7日(金) 09:30 〜 10:30 第2会場 (G4)

座長:大内 秀雄(国立循環器病研究センター成人先天性心疾患センター), 座長:中川 直美(広島市立広島市民病院循環器小児科)

[II-TSPCJS2-01] 成人先天性心疾患における抗血栓療法ー個別化治療の重要性ー

山村 健一郎1,2 (1.福岡市立こども病院 循環器集中治療科, 2.九州大学病院 ハートセンター成人先天性心疾患外来)

キーワード:抗凝固療法, 抗血小板療法, 成人先天性心疾患

成人循環器内科領域では、豊富な症例数を背景とした堅牢なエビデンスに基づき、血栓リスクや出血リスクなどを考慮した抗凝固療法・抗血小板療法を行うことが一般的である。しかしながら、先天性心疾患はその多様性や限られた症例数から、参考にできるエビデンスが極めて限られている。そのため、本学会でもかねてから多くの議論がなされているが、小児においても成人においても最適な標準治療というものが未だ存在しない。限られた情報と経験、信念に基づいて、個々の施設で独自の方法が選択されているのが現状と思われる。個人的な経験では、乳幼児期は頭部打撲を含めた外傷の可能性が常にあり、若年女性では過多月経が問題となりやすい。消化管出血も比較的よく経験する合併症のひとつである。一方、血栓症を経験することは比較的少ないが、シャント塞栓、脳梗塞、血栓弁など、発症した場合は重篤であることが多い。遠隔期の重要な血栓リスクとして不整脈の合併があるが、これらは成人期、特に中年以降に問題となることが多い。ライフステージで言うと、青少年のスポーツへの参加や、妊娠・出産も重要なイベントであり、特別な配慮を必要とする。こうした背景を考えると、先天性心疾患に対する抗凝固・抗血小板療法は、個々の患者の病状や生活、人生観などを考慮して、最適と思われるものを患者とともに選択する必要がある。今回は特に成人先天性心疾患領域に焦点を当て、現時点であきらかとなっているエビデンスや個人的な経験を整理し、今後の展望について述べたい。