第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ビデオセッション

ビデオセッション(II-V)

2023年7月7日(金) 11:00 〜 11:50 第7会場 (G314+315)

座長:落合 由恵(JCHO九州病院 心臓血管外科), 座長:白石 修一(新潟大学医歯学総合病院心臓血管外科)

[II-V-04] 乳児期早期に冠動脈パッチ拡大を施行した冠動脈狭窄および先天性大動脈弁上狭窄症の1例

加藤 葵1, 石田 真一1, 山本 隆平1, 大沢 拓哉1, 大河 秀行1, 野中 利通1, 櫻井 一2 (1.JCHO中京病院 心臓血管外科, 2.名古屋大学 医学部附属病院 心臓外科)

キーワード:冠動脈起始部狭窄, 先天性大動脈弁上狭窄症, 冠動脈パッチ拡大

【背景】先天性大動脈弁上狭窄症(SVAS)に伴う冠動脈起始部狭窄は,術中しばしば見られる所見である.今回,冠動脈起始部のみではなく左冠動脈主幹部(LMT)から左回旋枝(LCx)開口部まで狭窄を認め,乳児期早期に手術介入を要したSVASの1例を報告する.【症例】2ヶ月女児,体重5.5 kg.生後2週間健診で心雑音を指摘され当院紹介受診となった.カテーテル検査を施行したところ大動脈弁上圧較差は22 mmHgと中等度であったが,造影検査でLMTの狭窄を認めた.心エコーで壁運動低下は認めなかったが,LMTに乱流を疑う所見であった.心電図では右側胸部誘導でST低下を認め,採血では心筋逸脱酵素の上昇があり手術適応と判断した.【手術】上行大動脈を離断し3つのValsalva洞に切り込むと,LMT開口部が狭く開口部切開を行った.Myers法で大動脈を吻合し遮断解除としたが,心室粗動となりLCx領域の壁運動低下を認めたため冠血流不全を疑いやり直すこととした.再度遮断しLMT開口部の肥厚内膜を切除したが十分な拡大はできず,パッチ拡大の方針とした.大動脈断端からLMT天井を切開するとLCx開口部が狭く,内膜を切開し形成した.LMT天井はグルタールアルデヒドで処理した自己心膜で補填した.2回目の遮断解除後は壁運動低下なく,LMT血流もエコーで確認できた.術後は抗凝固薬および抗血小板剤を導入し16日目に退院となった.退院前の心電図ではST変化が改善し,心エコーでのLMT乱流は見られなくなった.【考察】SVASに伴う冠動脈起始部狭窄は知られているが,本症例は開口部のみではなくLMTからLCx開口部まで及んでおり,LMT開口部切開や肥厚内膜切除のみでは十分に拡大できなかったためパッチ拡大を選択した.当院では肺動脈壁を第一選択としているが,術前評価で肺動脈全体に高度狭窄があり本症例では自己心膜を用いた.心電図変化と心筋逸脱酵素の上昇があり生後2ヶ月での手術介入となったが,良好な結果を得た.