[II-V-05] 特異な冠動脈形態(Shaher 7a)を伴うDORVに対する動脈スイッチ手術〜Aortic sinus pouch法のpitfall〜
キーワード:Aortic Sinus Pouch, 動脈スイッチ, 冠動脈
【背景】動脈スイッチ手術において特異な冠動脈形態に対する移植法には工夫を要する。当院では直接移植が困難なShaher3型(単冠動脈)やShaher5型に対して隣接する2つvalsalva洞壁を刳り貫き折り畳んで作成したpouchを新大動脈に接続する冠動脈血行再建(Aortic Sinus Pouch法:ASP)を行い安定した冠血行を確認してきた。【目的】今回、我々はShaher7a(Sinus1:Conus branch. Sinus2:RCA+LAD+Cx)型の冠動脈形態を伴う大血管関係side by sideのDORVに対してASP法による冠動脈移植を行い良好は冠血行を確立できたので報告する。【方法】症例は非胎児診断例の日齢27男児、体重3.0kg。在胎39週、他院出生後チアノーゼのため当院搬送。精査にてsinus1からLong conus branchが起始し、sinus2から3主幹が起始するShaher7aを伴うDORVと診断。VSDが大きく心内形態から低体重での心内rerouteは過侵襲と判断し二期的戦略の方針とし、第一期手術(動脈スイッチ+肺血流制御)をビデオ供覧する。Sinus2の3主幹冠動脈が右寄りに開口しside by sideの大血管関係のため直接移植により右冠動脈の過伸展が危惧されたためASP法を選択した。【結果】Pouch丈が長過ぎたため左冠動脈の屈曲を招き修正を要したが最終的に冠灌流は良好に維持され心機能も良好に保たれている。肺血流がやや多めであるが緩やかに体重増加が得られており術後2か月が経過し体重4.1kgで第二期手術待機中。【考察】ASP法は直接移植が難しい冠動脈形態に対して過伸展や捻転を回避できる良い手法であるが、起始から短距離で分枝する本形態において右冠動脈に十分なゆとりを持たせた結果、左冠動脈の屈曲を招き、pouch長を短かく修正することで冠血行は改善された。【結論】ASP法におけるpouch長(大動脈切断位置)は過伸展を回避できる最小限に留めることで広く適応拡大できると考える。