[III-CSY08-07] 疫学研究(2020B-01)ガイドライン作成へ向けて
キーワード:無脾症候群, 抗菌薬予防投与, 予防接種
【背景】脾機能が低下した(無脾症あるいは機能的無脾症)患者では、抗体の産生やオプソニン作用が低下する。したがって、細菌感染症、特に莢膜を有する肺炎球菌やインフルエンザ桿菌b型、髄膜炎菌に罹患すると、急激に重症化し、時に致死的となることが知られている。本邦では先天性無脾症候群患者に対する感染対策は、主治医や各医療機関で異なり、具体的な感染管理指針がないことが問題である。【目的】小児循環器学会修練施設群における先天性無脾症候群に対する感染管理の現状・課題を明らかにし、感染管理指針を作成することを目的とする。【方法・結果】2021年、全国の小児循環器専門医修練施設に対して質問票を用いた調査を行い、118の施設から回答を得た。「重症感染症」「発熱時対応」「抗菌薬の予防内服」「予防接種」の4つの項目に関して調査した。重症感染症罹患例を経験した施設は24施設(20.3%)であり、起因菌の多くは肺炎球菌(91.7%)であった。発熱時の積極的な受診を指導している施設は全体の29.7%であり、抗菌薬の予防内服有の施設は、全体の51.7%であった。23価肺炎球菌ワクチンおよび髄膜炎菌ワクチンは、62.7%の施設が積極的な接種を指導していた。現在、日本小児感染症学会監修で日本小児循環器学会を含む9学会合同の『免疫不全状態にある患者に対する予防接種ガイドライン(仮称)』を作成している。【考察・結語】本研究の結果から先天性無脾症候群における重症感染症は、依然予後不良であることが予測され、感染管理の方針も施設毎に大きく異なることが分かった。さらに詳細を評価する目的で、レジストリ研究を計画している。先天性無脾症候群の予後改善のため、本邦でもガイドラインを策定し、無脾症候群の患者を診療する機会の多い小児循環器学会においても感染管理指針を示し、検証していきたい。