[III-JS-01] Fontan手術の周術期生存者における肝硬変及び肝細胞癌の発生率とその予測因子の検討
Keywords:フォンタン手術, 肝臓病, 長期予後
目的:フォンタン関連肝疾患(FALD)は,フォンタン手術後遠隔期合併症として広く認識されている.しかし、FALDのスクリーニングと管理の指針となるFALDの予測因子に関するデータは不足している。フォンタン手術後の患者における肝硬変(LC)および肝細胞がん(HCC)の発生率とその予測因子について報告する。方法: 本研究は後方視的コホート研究である。日本国内9施設における2011年以前のフォンタン手術の周術期生存者で、術後カテーテル検査を受けたすべての患者の臨床データを診療録から収集した。結果: 計1260人(女性599人、47.5%)が、中央値3.6歳で初回のFontan手術を受けていた。心臓カテーテル検査はフォンタン術後1.0年目(中央値)に実施されていた。追跡期間中央値10.2年の間に、107人(8.5%)が死亡し、73人(5.8%)がLCと診断され、9人(0.7%)がHCCと診断された。LCとHCCの診断時の年齢中央値は、それぞれ24.6歳と27.1歳であった。Fontan術後10年、20年、30年の累積発生率は、LCが0.9%、11.6%、25.7%、HCCが0%、0.8%、2.8%だった。フォンタン術後30年後にLCやHCCを発症せずに生存していたのは54.1%であった。多変量解析では、術後カテーテル検査時の中心静脈圧(CVP)高値(HR、3mmHgあたり1.28(95%CI 1.01~1.63);p=0.042) と重度の房室弁逆流(HR、6.02(95%CI 1.53~23.77);p=0.010) がLC/HCCの独立予測因子と特定された。結論:本研究により、フォンタン集団における進行性肝疾患の多大な負担を浮き彫りになった。Fontan手術後約1年で高CVPや重度の房室弁逆流を有する患者は、長期的には進行性肝疾患を発症するリスクが高くなる。CVPと房室弁逆流を軽減するような治療介入が進行性肝疾患の発生率を低下させるかどうかについては、さらなる解明が必要である。