第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

胎児

ポスター発表(III-P09-4)
胎児1

2023年7月8日(土) 09:30 〜 10:20 ポスター会場 (ポスター展示会場)

座長:河津 由紀子(福山市民病院小児科)

[III-P09-4-01] circular shuntを伴う胎児Ebstein病に対する胎児治療

漢 伸彦1,3,4, 古賀 恭子1,2, 鈴木 彩代4, 杉野 充伸1, 佐川 浩一4 (1.福岡市立こども病院 胎児循環器科, 2.福岡市立こども病院 検査科, 3.福岡市立こども病院 新生児科, 4.福岡市立こども病院 循環器科)

キーワード:Ebstein, 胎児治療, 胎児心疾患

【緒言】重度三尖弁逆流を伴う重症胎児Ebstein病(EA)は治療法の進歩により妊娠35週以降に分娩すれば多くは救命可能である.妊娠中期に肺動脈弁逆流(PR)が悪化すればcircular shunt(CS)となり多くは胎児水腫,胎児死亡するが,母体へのNSAIDs投与により胎児死亡が回避できるという報告が北米からされている.本治療は国内ではほとんど実施されておらず当院での経験を報告する.【症例】母体29歳,初産婦,妊娠23週にEbstein病(Carpentier D)と診断した.PRは徐々に増悪し妊娠29週には連続性PR,心拡大増悪(50%→65%), 胸腹水貯留と臍帯動脈(UA)拡張末期血流の途絶/逆流を認めた.CSにより胎児死亡の可能性が高いと判断して院内倫理委員会の承認と両親の同意を得てNSAIDs母体投与を妊娠32週2日から開始した.投与方法は海外での報告に準じ,治療効果は動脈管(DA)径と流速,CTARの計測と胎児胸水と腹水の有無,UA及び中大脳動脈(MCA)の拡張末期血流の途絶/逆流の有無より判定した.1, 2日目はindomethacin(IND)100mg/日投与しDAは3mmから1.5mmに狭小化しUA逆流と腹水は認めなくなり副作用の少ないibuprofen(IB)600mg/日へ変更した.しかしDA再拡張してUA逆流と心嚢水貯留を認めたため12日よりIND50-75mg/日へ再変更した.DAは2mm程度に再収縮してUA所見は改善したが重度羊水過小を認めた.妊娠36週に予定帝王切開と同日心臓外科治療の予定である.【考察】CS合併したEAに対してNSAIDs投与により胎児循環は改善し妊娠継続は可能であった.本胎児治療によりCS合併した胎児EAの予後改善は期待出来るが,適応や薬剤投与量,有効性の評価方法など課題は多く,国内各施設の症例を集積して安全で有効な治療プロトコールの確立が望まれる.