[III-P09-5-02] 川崎病既往未確認の成人突然死例における冠動脈瘤の組織学的検討
キーワード:川崎病, 冠動脈瘤, 病理
【背景】前回の本学会では、川崎病(KD)既往が明確な成人における冠動脈瘤の病理所見を呈示し、KDの冠動脈瘤は起始部に好発し、高度の石灰化を伴うこと、種々の程度の粥状硬化性変化を伴うことを報告した。今回は、冠動脈瘤が存在するものの、KD既往が確認されていない成人剖検例について、患者背景と冠動脈瘤の組織像を検討し、KD既往確実例と比較した。【方法】冠動脈瘤を有する成人突然死例のうち、KD既往未確認の14例(死亡時年齢:18~57歳、男性9例、女性5例)を対象とした。その内訳は、川崎病全国調査データベースに患者イニシャル、性別、生年月日を照会したが合致しなかった11例と患者イニシャルが不明で照合不可能であった3例である。剖検時のBMI、冠危険因子、冠動脈瘤の組織所見を検討した。【結果】①全国調査データベースに照会した11例のうち、全国調査が開始された1970年以前の出生が8例存在した。②小児期にリンゴ病やウイルス感染を疑う熱性疾患の既往がある症例が5例含まれていた。③BMIは13例が25未満であり、1例のみ25以上の肥満症例であった。④冠危険因子は高血圧2例、糖尿病1例、喫煙6例で認められた。⑤心重量が400g以上の症例が3例認められた。⑥多くの症例で冠動脈瘤は起始部に形成されており、石灰化を伴っていたが、これに加えて石灰化の乏しい瘤や炎症細胞浸潤の目立つ瘤、解離が疑われる症例も少数ながら存在していた。【まとめ】KD既往未確認例には、形態学的にKD後遺病変と鑑別が困難な症例が存在しており、乳幼児期に診断されなかったKD症例が含まれる可能性がある。その一方で、KDとは成因・病態の異なる血管炎疾患も含まれていることが推測された。血管病変部に生じた粥状動脈硬化症についても検索を加え報告したい。