[III-P12-1-02] 川崎病における補正T wave peak to end/QTの急性期と遠隔期における検討
Keywords: 川崎病, 安静時心電図, T wave peak to end/QT
【背景】T wave peak to end/QT (Tp-e/QT)の延長は心筋の再分極異常を反映し, 川崎病でも報告される. 急性期川崎病の多くに無症候性心筋炎を伴うとされ, 冠動脈病変を伴わない症例でも心筋障害に伴うTp-e/QTの異常が遠隔期に残存する可能性がある.【目的】川崎病児のTp-e/QTの遠隔期における異常の有無を明らかにすること.【方法】対象は川崎病群106例(発症時年齢:中央値20か月)と正常対照群226例. V5誘導のTp-e/QTc(Tp-e/QTをFridericia法で心拍補正したもの)を川崎病急性期治療前(A群), 回復期~発症後11か月(中央値4か月, B群), 発症後12~23か月(中央値13か月, C群), 発症後24~36か月(中央値28か月, D群)と正常対照群の間で比較した.【結果】Tp-e/QTcは, A群0.20±0.03, B群0.19±0.02, C群0.18±0.02, D群0.19±0.03, 正常対照群0.17±0.02であり, 正常対照群に対してA~D群ではいずれも有意に高値であった(P<0.0001).またA群のp-e/QTcは, B~D群のすべてに対して有意に高値であったが, B~D群間には有意差を認めなかった.正常対照群では体表面積とTp-e/QTc間には相関係数+0.608と正の相関を認めた. 加齢による影響を否定するためにD群と, 正常対照群のうち年齢範囲がD群と同じ125例との間でTp-e/QTcを比較したが, D群が有意に高値(0.19±0.03 vs. 0.17±0.02, P<0.0001)であり, 川崎病群では遠隔期における加齢による影響を除外してもTp-e/QTcの平均値が高値であった. 急性期の血液検査・心臓超音波所見, 治療内容とTp-e/QTcの間に有意な相関を認めなかった.【考察】川崎病罹患後24~36か月の遠隔期においてもTp-e/QTc高値を示す症例が存在した. 急性期における心筋障害の影響が示唆されたが, 冠動脈病変のない症例にも認められた. Tp-e/QTcの高値は不整脈発生の危険因子とされるため, 長期の経過観察を必要とする可能性が示唆された.