[III-P12-1-03] 心室細動による心肺停止を契機に診断された巨大冠動脈瘤の乳児例
Keywords:巨大冠動脈瘤, 急性心筋梗塞, 川崎病
【背景】小児の急性心筋梗塞の原因の一つとして、川崎病の冠動脈後遺症における血栓性塞栓が知られている。しかし川崎病の病歴がないにも関わらず、急性心筋梗塞による乳幼児突然死やニアミスに至る症例も散見される。【症例】4か月男児。自宅で午睡中に突然呻き声を上げて心肺停止となり、救急搬送された。救急車内で心室細動に対して除細動が2回実施された。病院到着時の心電図は洞調律で、Ⅱ/Ⅲ/aVf誘導でST上昇を示し、血液検査でトロポニンTは高値だった。心エコーで両側冠動脈は著明に拡張し、特に右冠動脈には8−10mmの巨大瘤と瘤内血栓を認め、心肺停止の原因は血栓性塞栓による心筋梗塞と考えられた。ICU入室後は瘤の破裂に注意して鎮静、血圧コントロールを行った。血栓に対してはヘパリン持続静注に加えて、アルテプラーゼ(3日間)とウロキナーゼ(6日間)を経静脈的に投与した。冠動脈瘤の原因として川崎病の可能性も考えIVIg療法を2回行った。ウロキナーゼ投与後に血栓は消失し、アスピリンとワーファリンによる抗凝固療法を導入した。神経学的後遺症なく入院50日目に自宅退院した。発症後3か月時の心臓カテーテル検査で10mm径の冠動脈瘤が多発していたが残存血栓は認めず、その後心イベントなく経過している。なお病歴の追加聴取では、入院2週間前に1日のみ眼球結膜充血と発疹が出現していたが自然軽快しており、川崎病の可能性は否定できないが断定もできなかった。入院中に行った精査ではその他の冠動脈疾患や血管炎等は否定的だった。【考察】明確な川崎病既往がなくても乳幼児の突然死あるいはニアミス症例では冠動脈病変の有無を確認することが必要と考えられた。