[III-P12-1-05] 広範囲の深部静脈血栓症からMay-Thurner syndromeの合併が疑われた抗リン脂質抗体症候群の男性例
キーワード:DVT, APS, May-Thurner Syndrome
【背景】深部静脈血栓症(DVT)は既往のない小児では稀である。一方で若年例でもMay-Thurner症候群(MTS)と呼ばれる総腸骨動脈交差部での左総腸骨静脈狭窄がDVTの解剖学的成因になることが報告されている。【症例】既往のない14歳男児、1か月ほど前からの起床後の腰痛や左下肢痛を主訴に前医を受診した。左下腿浮腫と下肢静脈エコー所見からDVTが疑われ当院に転院搬送となった。造影CT検査では肺塞栓は認めないものの、総腸骨静脈から左下肢末端までの広範囲にわたる血栓と右総腸骨動脈-椎骨間での左総腸骨静脈狭窄を認めた。入院後ヘパリン持続静脈注射とワルファリン内服による血栓融解療法単独で治療を開始した。入院時の血液検査でループスアンチコアグラントが陽性となり、抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断とした。左下腿浮腫は改善し、入院後2週間の造影CTでも肺塞栓を認めず遊離血栓も認めなかったことから退院とし外来での管理に切り替えている。【考察】小児DVTの多くが入院中の中心静脈カテーテルに関連する。外来例の大半は経口避妊薬内服による女児例で、既往のない若年男児の報告は非常に少ない。MTSとは総腸骨動脈と椎骨による左総腸骨静脈の圧排がDVTの成因になる解剖学的特徴であり、それ以外のリスク因子を持たない若年男性の報告がある。本症例ではAPSのみならずMTSが本病態の発症に関与したことが考えられる。MTSはDVT発症として過少評価されており、今後の知見が求められる。【結論】小児DVT例では解剖学的成因も含めた複数の原因を検索する必要がある。