[III-P12-3-05] 心臓手術後の難治性乳糜を早期に予測しうる心臓手術周術期の指標
Keywords:難治性乳び, ドレーン量, 周術期
【背景】心臓手術に関連した難治性乳糜の危険因子には21トリソミー,ヌーナン症候群,大血管手術,右心バイパスなどがあるが,乳糜の治療開始時に難治性か否かを判断することは難しい.【目的】難治性乳糜を早期に予測しうる心臓手術周術期の指標を探索すること.【方法】2019~2022年に心臓手術後に乳糜と診断された先天性心疾患29例.患者背景,診断,手術手技,周術期管理,乳糜診断前の1日ドレーン量,乳糜の治療,転機について調査し,乳糜の治療期間が14日以上だった例(L群)と14日未満の例(S群)を比較した.本検討では「術後1週間以内かつ乳糜診断前の最大1日ドレーン量」をkgD1maxと定め,同指標が難治性乳糜を予測しうるかも検討した.【結果】乳糜の発生率は5.3%(29/545).Heterotaxy7,HLHS5,TGA5,CoA/IAA5,他7.L群17,S群12.治療日数:L群31日[15-232],S群11日[4-13],p<0.01.二群間で患者背景や手術手技,手術から乳糜診断までの日数(L群8日[2-22], S群9日[5-21],p=0.9)に有意差はなかった.死亡は3例で全てL群だった.S群と比較してL群では,ドレーン留置日数(L群13日[4-93],S群5日[2-12],p=0.01)や人工呼吸管理日数(L群6日[1-103],S群5日[1-27],p=0.048)が長かった.24時間以上の絶食(L群14[82],S群3[25],p<0.01),オクトレオチド(L群15[88], S群3[25],p<0.01),およびステロイド(L群12[71],S群2[17],p<0.01)の頻度も,S群と比較してL群で高かった.全期間を通じた最大1日ドレーン量(L群40mL/kg/日[23-126],S群26mL/kg/日[15-52],p<0.01)と,kgD1max (L群30 mL/kg/日[5.4-66], S群18mL/kg/日[5.4-52], p = 0.035)はL群で有意に多かった.乳糜治療期間14日以上を予測するkgD1maxは26.5mL/kg/日(AUC0.703, 感度65%, 特異度83%)だった.【結語】kgD1max(術後1週間以内かつ乳糜診断前の最大1日ドレーン量)が26mL/kg/日を超える場合は,乳糜治療に2週間以上を要する可能性が高い.