[III-PPD4-06] 先天性心疾患術後に心筋還流不全に起因する症状が疑われた症例に対するアプローチ
キーワード:心筋虚血, 大動脈機能, 左室流出路狭窄
背景:左心系流出路狭窄性疾患は心室仕事量を増加させる一方で、心拍出予備能低下から心筋酸素供給増加は得られがたく、冠動脈に明確な狭窄なしに相対的心筋虚血を惹起する。冠動脈狭窄を伴わず、冠血流不全が疑われたために外科的介入適応とした症例の臨床経過を総括し、治療前後のケアおよび介入時期の判断について検討した。対象と方法:先天性心疾患術後症例のうち冠血流不全を疑った4例を対象とし、臨床経過を総括した。結果:内訳は1.Norwood手術後大動脈縮窄遺残1例 (4か月)、2/3.大動脈弓離断複合type Bに対する修復術後左室流出路および大動脈弁・大動脈弁上狭窄2例 (1歳および11歳)、4. remote型両大血管右室起始症に対するRastelli術後心内バッフル狭窄 (13歳)であった。症例1は高度な心不全症状を呈し、縮窄部手前で著明なSEVR (Sub-endocardial viability ratio) 低下を認めたため、心不全治療を併用し、大動脈弓再形成およびグレン手術を施行した。症例2はWilliams症候群を合併した高度上行大動脈低形成・左室流出路狭窄の症例であり、心筋肥厚(後壁厚 z value +10.41)とストレインパターンを認めた。初回手術時の大動脈壁組織異常が顕著であったため治療対象外と判断していたが、慎重な在宅管理により成長が得られたため、上行大動脈のみの血管形成を行い症状が消失した。3,4例目はいずれも成長期に、運動に伴い顔色不良を伴う胸痛が再現性を持って家族または本人が認識し治療対象とした。カテーテル検査・心電図・血液検査では明らかな虚血所見は検出されなかったが、ドブタミン負荷により流出路狭窄が高度になること、SEVR低値を根拠に治療介入した。考察:いずれも冠血流不全と直結する所見に乏しかったが、症状が心筋虚血により説明され、他の病態によって説明されないことを根拠に治療を選択した。1例を脳梗塞により失ったが、厳密な術前の活動制限により治療介入が可能であった。