第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望シンポジウム

会長要望シンポジウム4(III-PSY4)
リンパ漏の診断と治療<最新版>

2023年7月8日(土) 09:20 〜 10:50 第2会場 (G4)

座長:保土田 健太郎(埼玉医科大学国際医療センター小児心臓外科), 座長:井上 政則(慶應義塾大学放射線診療科)

[III-PSY4-04] 先天性心疾患術後リンパ管障害に対する外科治療経験:リンパ管画像検査に基づいた治療戦略

原田 智哉, 大橋 啓之, 三谷 義英, 坪谷 尚季, 大矢 和伸, 淀谷 典子, 澤田 博文, 平山 雅浩 (三重大学医学部小児科)

キーワード:リンパ管手術, 乳び胸, 蛋白漏出性胃腸症

【背景】先天性心疾患術後リンパ管障害の病態の評価に、MRリンパ管造影、リンパ管シンチグラフィー、インドシアニングリーンリンパ管造影などによる画像診断が可能となり、治療介入の進歩がみられる。【方法】当院において先天性心疾患術後に内科的治療抵抗性のリンパ管障害をきたし外科的介入を要した症例の後方視的検討。【結果】症例は4例で、症例1大動脈離断症術後(生後5か月)、症例2両大血管右室起始症肺動脈絞扼術後(生後3か月)、症例3大動脈離断症術後(生後1か月)、症例4Fontan術後(25歳)。症例1-3は乳び胸で、各々MRリンパ管造影、リンパ管シンチグラフィー、インドシアニングリーンリンパ管造影により漏出が同定され初回外科的介入(症例1、2:胸管結紮術、症例3:開腹下リンパ管塞栓術とリンパ管静脈吻合術)が施行された。症例2と3では乳び胸が再発した。症例2ではリピオドールリンパ管造影で胸腔内への造影剤漏出を認め、開腹下リンパ管塞栓術を追加し軽快。症例3では、静脈造影で左静脈角付近での静脈閉塞を認め、同部位でのリンパ流うっ滞を疑い、リンパ管静脈吻合術を追加し軽快した。内科治療期間は3-71日(中央値 33日)、初回外科的介入から軽快までの期間は8-119日(中央値 53日)。症例4は蛋白漏出性胃腸症で、ステロイドなど内科治療下で再燃/寛解を繰り返していた。蛋白漏出性胃腸症発症16年後の再燃時にリンパ管シンチグラフィーでリンパうっ滞を疑いリンパ管静脈吻合術施行。術後4か月程度で軽快した。【結論】先天性心疾患術後にリンパ管障害を伴った内科的治療抵抗性の症例で、リンパ管静脈吻合術を含めた外科的介入、再介入を考慮する際、リンパ管の画像検査が有用であった。従来の治療に難渋した乳び胸、蛋白漏出性胃腸症に対してリンパ管への外科的適応が検討される中で、これらのリンパ管画像検査の有用性が示唆された。