第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

会長要望シンポジウム

会長要望シンポジウム4(III-PSY4)
リンパ漏の診断と治療<最新版>

2023年7月8日(土) 09:20 〜 10:50 第2会場 (G4)

座長:保土田 健太郎(埼玉医科大学国際医療センター小児心臓外科), 座長:井上 政則(慶應義塾大学放射線診療科)

[III-PSY4-05] 先天性心疾患術後難治性浸出液に対する血液凝固第XIII因子補充療法による治療成績

荒木 幹太, 小澤 秀登, 竹原 貴之, 鍵﨑 康治 (大阪市立総合医療センター 小児医療センター 小児心臓血管外科)

キーワード:難治性浸出液, 血液凝固第XIII因子, 先天性心疾患術後

【背景】当院では,先天性心疾患(CHD)術後の難治性浸出液(PE)に対し,患者背景,術式,術後リンパ瘻や右心不全が危惧されるような症例では,標準的治療に加え,組織修復促進目的の血液凝固第XIII因子(FXIII)補充療法を積極的に行っいる.今回,その介入時期の違いによる術後経過の差を検討した.【方法】2018年から2022年の間にCHD術後に心嚢縦隔,及び胸腔ドレーン排液の増加,混濁に対し,FXIII補充療法(0.5ml/kg/day×5日)を94例に施行.うち,術後0-2日目の早期に介入した(E)群33例と,術後3日目以降に介入した(N)群61例の2群に分け,患者背景,手術,術後経過を後方視的に検討.【結果】原疾患はSV27例,TF/DORV25例,AVSD8例,IAA/CoA7例,TAPVC6例,他21例で両群間に差なし.術式はTF/DORV修復,肺動脈統合,右室流出路再建21例,右心バイパス19例,大動脈手術18例,弁手術11例,他25例で両群間に差はなし.しかし,手術時間>6時間(E;23/33例,N;27/61例,p=0.03),人工心肺時間>4時間(E;15/33例,N;14/61例,p=0.03)の症例が有意にE群で多かった.FXIII補充開始時までに栄養再開していた症例は有意にE群で少なく(E;15/33例,N;50/61例,p<0.01),FXIII補充時の血清FXIII値は有意にE群で高かった(E;中央値90[範囲46-177]%,N;61[25-199]%,p<0.01).術後2日目までのドレーン排液量に両群間で差は認めなかったが,総ドレーン排液量(E;45.9[3.8-587.5],N;116.8[13.1-4031.3]ml/kg,p=0.03),及びドレーン留置期間(E;11[3-50]日,N;17[6-159]日,p<0.01)が有意にE群で短く,入院期間(E;25[6-153]日,N;36.5[11-218]日,p=0.05 )もE群で短い傾向を認めた.また,PEに対し,脂肪制限食以上の絶食,オクトレオチド投与,外科治療等の治療介入を要した症例は有意にE群で少なかった(E;2/33例,N;16/61例,p=0.03).【まとめ】CHD術後PEに対するFXIIIの術後早期補充療法は,総ドレーン排液量の減少,ドレーン留置期間,入院期間の短縮に寄与している可能性が示唆された.