第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム10(III-SY10)
大人になった彼らを診た今、フォンタン治療計画を再考する

2023年7月8日(土) 14:00 〜 15:30 第2会場 (G4)

座長:渡辺 まみ江(JCHO九州病院循環器小児科), 座長:圓尾 文子(加古川中央市民病院心臓血管外科)

[III-SY10-01] 単心室患者におけるGlenn術前肺循環と遠隔期予後

宗内 淳1, 杉谷 雄一郎1, 江崎 大起1, 山田 洸夢1, 田中 惇史1, 古賀 大貴1, 真鍋 舜彦1, 城尾 クニヒコ2, 落合 由恵2, 渡邉 まみ江1 (1.JCHO九州病院 小児科, 2.JCHO九州病院 心臓血管外科)

キーワード:Fontan手術, 肺循環, 長期予後

【目的】機能的単心室患者の最終姑息術である右心バイパス(Glenn術・Fontan術)は、肺駆動心室欠如のため高中心静脈圧・低心拍出量を特徴とする。Glenn術前の肺循環指標が右心バイパス後の遠隔予後に与える影響を検討した。【方法】機能的単心室患者(N=308)のうち右心バイパス術に到達した例(N=249)において、Glenn術前の平均肺動脈圧(mPAP)・肺動脈径指数(PAI)・肺血管抵抗係数(Rp)・肺血管キャパシタンス(Cp)と、心血管イベント(CVE)(死亡・心不全入院・不整脈・PLE・再手術を含む)との関連を検討した。Rp=Qp/(mPAP-左房圧)、Cp=Qp/(心拍数×mPAP)とした。【結果】データ抽出可能であったN=241(女:106)を対象とした。Glenn術実施N=157、Fontan術実施N=187、Glenn術後死亡N=15、Fontan術待機(または回避)N=42であった。全死亡例N=29を含むCVEはN= 71であった。CVE有群においてGlenn時年齢[1.1(0.6–1.3)vs.1.3(0.8–1.9)歳:P=0.012]、Qp/Qs[1.10(0.68–1.40)vs.1.24(0.96–1.69):P=0.011]およびCp[2.89(1.99–4.09)vs.3.54(2.86–4.54)mL/mmHg・m2:P=0.001]は有意に低値であり、Rp[1.90(1.38–2.60)vs.1.51(1.14–2.01)WU・m2:P=0.001]は有意に高値であった。mPAP[13(11–16)vs.12(11–15):P=0.358]、PAI[308(209–427)vs.330(248–443):P=0.240]は関連がなかった。ロジスティック回帰分析ではGlenn年齢・Rp・CpのうちCpが最も強力なCVE関連因子であった。(オッズ比0.63:95%信頼区間0.40–0.98:P=0.041)【結語】Glenn術前の高Cpへ向けた管理が重要である。現在、心室機能温存のため低肺血流量管理が主流ながら、血管床成長が見込める乳児早期に適切な肺血流量維持の重要性も高まる。