第59回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

シンポジウム

シンポジウム10(III-SY10)
大人になった彼らを診た今、フォンタン治療計画を再考する

2023年7月8日(土) 14:00 〜 15:30 第2会場 (G4)

座長:渡辺 まみ江(JCHO九州病院循環器小児科), 座長:圓尾 文子(加古川中央市民病院心臓血管外科)

[III-SY10-02] フォンタン手術後児童の就学状況調査-就学前介入の重要性-

倉岡 彩子, 山田 佑也, 連 翔太, 鈴木 彩代, 白水 優光, 田尾 克生, 山村 健一郎, 石川 友一, 佐川 浩一 (福岡市立こども病院 循環器科)

キーワード:フォンタン手術, 発達支援, 療育

【背景】重症先天性心疾患児に対する早期発達支援の重要性が報告されているが、複数回の手術や長期入院を要するフォンタン(F)術適応症例では十分でないことも多い。【対象・方法】当院でF術を施行し、2022年度に小中学校に在籍中の256例について、就学前後の状況を郵送によるアンケート形式で調査した。回答率は63.7%(163例)で、染色体異常などの基礎疾患を除いた155例を対象とし、臨床経過も併せて検討した。小学校入学時の支援なし(N群)・あり(S群)、年代を中学校(前期)・小学校後半(中期)・前半(後期)とした。【結果】N群101例、S群54例で、全体の34.8%に支援を要していた。出生体重に有意差はなく、S群では左心低形成症候群(HLHS)が多く含まれていた(N 11.9%, S 35.2%)。S群では低酸素療法、ショック既往が多く、初回手術時日齢は早く(N 中央値43(0-364)日, S 21(0-393)日, p=0.044)、総手術回数は多かった(N 2.9±0.6回, S 3.6±1.1回, p<0.001)。初回入院日数(N 53(9-239)日, S 78(25-496)日, p<0.004)、総入院日数(N 124(47-355)日, S 176(87-744)日, p<0.001)ではS群がより長期入院を要していた。集団保育はN群94.1%に対してS群75.9%、療育はN群14.9%、S群59.3%で、自由記載では集団保育の受け入れ困難事例がみられた。多変量解析では、集団保育なし・療育あり・初回手術時日齢が要支援のリスク因子であった。年代別では前期40例、中期54例、後期61例で、中期・後期にHLHSが多く含まれ、初回・総入院日数が長かった。S群割合は前期30.0%、中期35.1%、後期37.7%であり、その中で療育を受けていたのはそれぞれ25.0%、63.2%、73.9%であった。【考察】多くの手術や入院を要する重症例で支援が必要となることが多いが、就学前の療育や集団保育を経験していない症例も存在する。より重症な症例への積極的な早期発達支援のためには、医療者・家族のみならず地域への啓蒙も重要である。